【特集】DXとSX(サステナブル・トランスフォーメーション)

気候変動枠組条約「パリ協定」から離脱した米国は、ジョー・バイデン次期大統領の下でパリ協定に復帰することが確実になった。日本の菅義偉首相も、遅ればせながら「カーボン実質ゼロ」を表明し、2030年代半ばのガソリン車販売禁止の方針も明らかになった。2050年脱炭素に向けて、世界はSX(サステナブル・トランスフォーメーション)に向けて動き出す。 (オルタナ編集長=森 摂、吉田 広子、池田 真隆、松田 ゆきの、寺町 幸枝、北京=斎藤 淳子、パリ=羽生 のり子)

脱炭素に不可欠

「サステナビリティに関連する投資リスクが増大する中、投資先がサステナビリティに関連した情報開示や事業活動で十分な進展を示せない場合には、経営陣と取締役に対して、反対票を投じることについて、より積極的に検討する」

ブラックロック年頭書簡が波紋

2020年1月、資産運用会社ブラックロック(本社ニューヨーク)のラリー・フィンク会長兼CEOは投資先企業にこのような年頭書簡を送った。

その文面からは、石油や天然ガスも含めた化石燃料産業全体からの投資引き揚げ(ダイベストメント)の意思を感じさせた。この年頭書簡で世界の金融業界の空気が変わった。日本の国家予算の8倍、7.4兆ドル(約817兆円)の運用資産を有する世界最大の資産運用会社だからだ。

その1カ月前、米ゴールドマン・サックスも「石炭産業からの投融資引き揚げだけでなく、北極圏での石油探査・生産への投融資も行わない」など、米大手金融機関としては最も厳しい化石燃料融資方針を発表した。

それまで「ダイベストメント」と言えば石炭からの投融資撤退を意味していたが、「2019年あたりから、石油や天然ガスも含めた化石燃料全体に対象を拡大した『脱炭素』が明確になってきた」(横山隆美・国際環境NGO「350.org」日本支部代表=元富士火災海上保険代表取締役社長)。

脱炭素は2015年のパリ協定が起点だが、この5年の動きは決して早いとは言えなかった。日本も2030年までの国別の削減目標(NDC)が2020年2月末までの提出期限に遅れたうえ、これまでと同様の「2 0 1 3 年比26%減」だったため、国際社会から非難を浴びていた。

その流れを変えたのが新型コロナで大きなダメージを受けた欧州だ。2020年5月にNGOの横断ネットワーク「ウィー・ミーン・ビジネス」や国連グローバル・コンパクトを中心に「ネットゼロ・リカバリー」を表明、コロナ復興と脱炭素を同時に進める新機軸を打ち出した。

7月にはEUや各国政府も加わった「グリーン・リカバリー」に発展した。米大統領選の流れも変わっていった。バイデン次期大統領は選挙を優勢に進める中で、「石油産業からの転換」を表明した。

4 年間で2 兆㌦(約210兆円)の環境投資、自然エネルギーやEV、水素技術などの推進のほか、製造過程でCO2排出が多い輸入品への課税も打ち出した。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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