エコとは何?エコを感じる時はいつ?

私の周りにいるいわゆる「環境屋さん」とお話しすると、不思議と皆さん、ああこれがあるべき環境なんだ、と得心する場面があった、とおっしゃる。私で言えば、例えば、山の渓谷の傍らにいて、流れを見ていると、そうだ、これが全き自然の仕組みなんだと、不意に感じられる瞬間があった(というか、何度もある)。

焚火のそばで星空を見上げていたらそう思った人もいた。昆虫が無心に葉を食べているのを見てそう思ったという人もいた。目の前のこの「セット」になった事ども皆が自分の一部なんだ、あるいは自分もそこにつながっているという、安らかな感覚といったらいいであろうか。読者の皆さんにはそうした記憶はないであろうか。

この納得感には生物的な根拠があると私は考える。太古の地球は、ただ、どろどろに溶けて何もかもが混じりあった溶岩の球体のようなものだったはずだが、時を経るに、いろいろな物に分化して、大変に複雑な相互依存の網の目に進化した。社会科学などを専攻する人は、自然生態系に対しては、余り良い評価を与えない人が多い。

いわく、レッセフェール、弱肉強食の結果を是認する、フェタコンプリが自然の世界でしょ、といった態度がよく見られる。でもそうではないのではないか。単純な弱肉強食、例えば太古にいたムカシオオホオジロザメなどは、栄養の無駄が多く、長続きしなかったのである。それに替えて盛んになってきたのは、きめ細かな、単に食べる食べられる関係ではない相互影響の網の目である。

多様な資源や情報を多様な目的で融通し合って活用する、そうした仕組みの方が、参加者にとって有用だったから、生物は複雑に分化する形で進化してきたのである。生物それぞれ、自分を生かさせてくれる仕組みが生態系である。

多様な分業からなる相互依存の網の目が、エコなのではないか。多様性が利益を生む、ありがたい仕組み・システムがエコロジーではないか。それを人間が感じる時がアメニティ感覚なのではないか、と私は思う。

この「エコめがね」のコーナーでは、多様なステークホルダーが参加して、単に金銭利益だけではなくいろいろな価値を交換して共に納得し、そして、お互いに進化していく、そうした取り組みを取り上げていきたい。

■小林光(こばやし・ひかる)
東大先端科学技術研究センター研究顧問。1949年、東京生まれ。73年、慶應義塾大学経済学部を卒業し、環境庁入庁。環境管理局長、地球環境局長、事務次官を歴任し、2011年退官。以降、慶應SFCや東大駒場、米国ノースセントラル・カレッジなどで教鞭を執る。社会人として、東大都市工学科修了、工学博士。上場企業の社外取締役やエコ賃貸施主として経営にも携わる。

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小林 光(東大先端科学技術研究センター研究顧問)

1949年、東京生まれ。73年、慶應義塾大学経済学部を卒業し、環境庁入庁。環境管理局長、地球環境局長、事務次官を歴任し、2011年退官。以降、慶應SFCや東大駒場、米国ノースセントラル・カレッジなどで教鞭を執る。社会人として、東大都市工学科修了、工学博士。上場企業の社外取締役やエコ賃貸施主として経営にも携わる

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