調達する肉や卵、法令遵守できていますか?

法令違反をする農場から肉や卵を仕入れれば自社の評判を下げることにつながる上、常識的に企業も消費者も法令違反には加担したくないものだ。

私達NGOが企業にアニマルウェルフェアを求めた時に、回答として「法令遵守」しているというものがあるが、これを畜産物に関して明言するのは実はチャレンジである。

殺処分の方法を生産者は公開していないし、業界団体すらどのように殺処分をしているかは把握していない有様である。

そもそも畜産物のトレーサビリティは牛肉と卵以外ではほぼできない。また毎年のように豚熱や鳥インフルエンザが流行するようになった今、農場は完全な密室になっている。現状を知るのは従業員しかいない。

幸い、多くの人が農場の内部で働いており、その声は少しずつ外に出てきている。

企業には、自社のリスクを回避するとともにこの課題を解決するための大きな力がある。不適切な方法で殺処分をする生産者の畜産物を調達しないルールを作り、それを調達先に確認することだ。その際、動物虐待かどうかの判断を業者に任せてはならない。

動物虐待であるかどうかは、基本的には「一般人の健全な常識により判別すべきもの(環境省)」であるからだ。毎日その行為を見ている人の感覚ではなく、一般市民の常識でぎょっとすることは、やっぱりあってはならない行為なのだ。

畜産業はきれいごとではすまされない。日々、殺処分の義務は発生している。そろそろ現実を直視して、暴力を社会から排除する行動を企業もとってほしいと願う。


[1] World Animal Protection https://api.worldanimalprotection.org/indicators

chihirookada

岡田 千尋(NPO法人アニマルライツセンター代表理事/オルタナ客員論説委員)

NPO法人アニマルライツセンター代表理事・日本エシカル推進協議会理事。2001年からアニマルライツセンターで調査、戦略立案などを担い、2003年から代表理事を務める。主に畜産動物のアニマルウェルフェア向上や動物性の食品や動物性の衣類素材の削減、ヴィーガンやエシカル消費の普及に取り組んでいる。【連載】アニマルウェルフェアのリスクとチャンス

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