「子どもたちと社会をつなぎたい」——そんな明確かつ強い想いを持って異業種から教員の世界に飛び込み、総合的な学習の時間(以下、総合)を活用して社会に開かれた教育課程を体現しているのが、三鷹市立第三小学校の山下徹さんだ。社会とのつながりを意識した実践を数多く手掛けてこられた山下さんに、これまでの道のりや実践を通して感じたことについて、お話を聞いた。(三原菜央・株式会社スマイルバトン代表取締役)
子どもたちと社会をつなぎたい
山下さんは大学卒業後、貿易会社や食品関係の営業職を経験した後、働きながら通信で小学校教員の免許を取得し、教員になった。なぜ、会社員から教員を目指したのか。
「会社員時代、上司のすすめで給料の10%を本代に使っていたのですが、教育関係の本ばかり買っていることに気づいたんです。もちろんビジネス書から小説までいろいろなジャンルの本を読んでいたのですが、どんな本を読んでいても、結局全ての根本は人を育てる教育だと感じました。」
「当時は、東京都で初めて民間人校長として採用された藤原和博先生が、学校と外部をつなげていろいろな実践をされていた時期でした。学校と社会がつながっていく姿を見て、教育業界が大きな変換期に突入しているのを感じたんです。私も教育を通じて子どもたちと社会をつないでいきたいと思い、教員を目指しました。」
熱い思いを持って教育現場に飛び込んだ山下さんだったが、最初はうまくいかないことの方が多かったという。「これは今でも反省しているのですが、最初は自分の足元も見ずに好き勝手やってしまって、先生方から反感を買ってしまったんです。放課後も、教室に閉じこもって一人で仕事をしていました。でもそれでは自分のやりたいことを誰も認めてくれないですよね。」
「まずは先生たちとのコミュニケーションを大切にして関係性構築に力を入れ、授業を通して子どもたちの変容を見ていただき信頼関係を積み上げることで、少しずつ自分がやりたいことに取り組める土壌作りをしていきました。本格的に総合の時間を活用して子どもたちと社会をつなぐようになったのは、2016年頃です。」