「父親が『国際絞り会議』のために持ってきた有松絞りの作品を見て、ディーチが『これは何だ』と聞くので、実家で作っている絞りで全て手作りだと説明すると、すごく興味を抱いたのです。彼は、何かビジネスをしたいと思っていたが、この絞りこそがその探していた何かかもしれないと」(村瀬さん)
同時に、村瀬さんも、ベネチア・ビエンナーレで見た展覧会に大きな刺激を受ける。「ある展示を見て、衝撃を受けたのです。年代もジャンルも洋の東西も、有名無名も、何もかもがごちゃごちゃになった空間で、そこにすごいエネルギーを感じました」。
そこからチャレンジが始まった。ディーチさんとドイツで、日本の伝統世界をヨーロッパに紹介するという目的で会社を立ち上げたとき、村瀬さんは26歳。この歳で、故郷に戻り、有松絞りの技術を自ら一から学んだ。
その後は、ドイツで、ヨーロッパの人々が生活の中で使いたくなるようなものという視点で、商品作りを始める。ブランド名は「suzusan(スズサン)」、これは村瀬さんで五代目となる「鈴三商店」の名前からとった。