アートで表現する有松絞り:suzusan

「父親が『国際絞り会議』のために持ってきた有松絞りの作品を見て、ディーチが『これは何だ』と聞くので、実家で作っている絞りで全て手作りだと説明すると、すごく興味を抱いたのです。彼は、何かビジネスをしたいと思っていたが、この絞りこそがその探していた何かかもしれないと」(村瀬さん)

同時に、村瀬さんも、ベネチア・ビエンナーレで見た展覧会に大きな刺激を受ける。「ある展示を見て、衝撃を受けたのです。年代もジャンルも洋の東西も、有名無名も、何もかもがごちゃごちゃになった空間で、そこにすごいエネルギーを感じました」。

そこからチャレンジが始まった。ディーチさんとドイツで、日本の伝統世界をヨーロッパに紹介するという目的で会社を立ち上げたとき、村瀬さんは26歳。この歳で、故郷に戻り、有松絞りの技術を自ら一から学んだ。

その後は、ドイツで、ヨーロッパの人々が生活の中で使いたくなるようなものという視点で、商品作りを始める。ブランド名は「suzusan(スズサン)」、これは村瀬さんで五代目となる「鈴三商店」の名前からとった。

■23カ国、130のセレクトショップで展開

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生駒 芳子(ファッションジャーナリスト)

ファッションジャーナリスト、アート・プロデューサー。VOGUE、ELLEの副編集長を経て2008年より「マリ・クレール」の編集長を務め、独立。ファッション、アート、デザインから、社会貢献、クール・ジャパンまで、カルチャーとエシカルを軸とした新世代のライフスタイルを提案。地場産業や伝統産業の開発事業、地域開発など、地域創生に数多く取り組む。2018年より、伝統工芸をベースにしたファッションとジュエリーのブランド「HIRUME」をスタートさせる。 アンダーグラウンド(モデル冨永愛個人事務所)代表、三重テラスクリエイティブ・ディレクター、日本エシカル推進協議会副会長、内閣府・消費者委員会委員、江戸東京きらり委員、東京2020ブランドアドバイザリーグループ委員、WEF(Women's Empowerment in Fashion)理事、認定 NPO 法人サービスグラント理事など。 連載:エシカルファッションの旗手たち

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