アートで表現する有松絞り:suzusan


絞り凹凸を形状記憶残し光の陰影を表現。4種類の絞り柄から選べる。埃などで汚れた際にもカバーが着脱可能で洗濯機で丸洗いできる。 7   ウールとカシミヤブレンドのブランケット。雁木杢目絞り 8ペルーで手織りで織られたアルパカ素材のクッション      9SHIZUKU   3万3000円 10HOKKAIDO  15万6000円

自由な発想で、商品作りをする過程で「昔からいる職人には、こんなものは有松絞りではない、と言われたこともありました」(村瀬さん)。そんなとき、矢面に立ってくれたのは、父親だったという。

作った商品は、日本では販売せずに、まずは欧米のマーケットに売り込んだ。ストール数本から始めた頃から、アポなしで話題のお店に売り込み、販売をみるみる広げた。現在では、23カ国、130のセレクトショップで販売する。

有松絞りの技法を生かしたストール、ワンピース、セーター、カーディガンなど、さらにはクッションやランプシェードなど、ファッションからライフスタイルに至るまで展開されている。素材も、従来の有松絞りなら木綿を思い浮かべるところだが、カシミア、アルパカ、ポリエステルなど今までにない発想で選ばれた素材が、有松絞りを進化させ続けている。

おそらく、「suzusan」を買い付けているヨーロッパのバイヤーたちは、有松絞りだから、というより、美しくて素敵なものだから、という理由で買い付けているのではないかと想像できる。

伝統の技術を今に生かして未来につなげて行くことも、自然への敬意、手作りの価値や美意識を持続させるという意味で大きなエシカル・アクションだ。今後、日本の伝統工芸の世界に、大きなインスピレーションをもたらすに違いない。

村瀬弘行(むらせ・ひろゆき)
1982年名古屋市生まれ。suzusanクリエイティブディレクター。2002年に渡欧、サリー美術大学(英)を経て、ドイツのデュッセルドルフ国立芸術アカデミー立体芸術及び建築学科卒。在学中の2008年にsuzusan  e.K.   を設立。ファッションとインテリアにおけるデザインのディレクションを手がける。
 

雑誌オルタナ 56号(2019年3月29日発売)から転載

yoshikoikoma

生駒 芳子(ファッションジャーナリスト)

ファッションジャーナリスト、アート・プロデューサー。VOGUE、ELLEの副編集長を経て2008年より「マリ・クレール」の編集長を務め、独立。ファッション、アート、デザインから、社会貢献、クール・ジャパンまで、カルチャーとエシカルを軸とした新世代のライフスタイルを提案。地場産業や伝統産業の開発事業、地域開発など、地域創生に数多く取り組む。2018年より、伝統工芸をベースにしたファッションとジュエリーのブランド「HIRUME」をスタートさせる。 アンダーグラウンド(モデル冨永愛個人事務所)代表、三重テラスクリエイティブ・ディレクター、日本エシカル推進協議会副会長、内閣府・消費者委員会委員、江戸東京きらり委員、東京2020ブランドアドバイザリーグループ委員、WEF(Women's Empowerment in Fashion)理事、認定 NPO 法人サービスグラント理事など。 連載:エシカルファッションの旗手たち

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