◆オルタナ本誌 連載「エシカルファッションの旗手たち」(56号)から

2019年春夏コレクション。ストライプ柄の織り柄のある素材に帽子鎧段絞りを施したコットンドレス。6万円
もし自分が、400年もの伝統を持つ世界の跡取りとして生まれたなら、いったいどんなふうに生きていけば良いのだろうか。そんな問いかけに、一つの答えを見つけた青年がいる。有松絞りをファッション、インテリア、アートとつなげて、グローバルに表現している村瀬弘行さんだ。
販売されているスカーフは、有松絞りという範疇を超えて、美しくアーティスティックでモダンなスカーフという印象。伝統という言葉より、アートという言葉の方が似合う風情だ。そしてその印象こそが、村瀬さんが目指す世界なのだという。
絞りに囲まれて育った村瀬さんだったが、もとより父親の仕事を継ぐ気持ちはなかったという。四代目の父親も、息子に継がせるということは言わなかった。
「小さい頃から有松絞りが当たり前すぎて、その価値に気づかなかった」と村瀬さんは言う。「それより、アートに興味があり、美大に行きたいと思っていました」。そう思い立ってからの村瀬さんは、アートをめがけて猛ダッシュ。国境を越えて、イギリス、そしてドイツへと向かう。
ファッションジャーナリスト、アート・プロデューサー。VOGUE、ELLEの副編集長を経て2008年より「マリ・クレール」の編集長を務め、独立。ファッション、アート、デザインから、社会貢献、クール・ジャパンまで、カルチャーとエシカルを軸とした新世代のライフスタイルを提案。地場産業や伝統産業の開発事業、地域開発など、地域創生に数多く取り組む。2018年より、伝統工芸をベースにしたファッションとジュエリーのブランド「HIRUME」をスタートさせる。 アンダーグラウンド(モデル冨永愛個人事務所)代表、三重テラスクリエイティブ・ディレクター、日本エシカル推進協議会副会長、内閣府・消費者委員会委員、江戸東京きらり委員、東京2020ブランドアドバイザリーグループ委員、WEF(Women’s Empowerment in Fashion)理事、認定 NPO 法人サービスグラント理事など。
連載:エシカルファッションの旗手たち