◆オルタナ本誌 連載「エシカルファッションの旗手たち」(56号)から

もし自分が、400年もの伝統を持つ世界の跡取りとして生まれたなら、いったいどんなふうに生きていけば良いのだろうか。そんな問いかけに、一つの答えを見つけた青年がいる。有松絞りをファッション、インテリア、アートとつなげて、グローバルに表現している村瀬弘行さんだ。
販売されているスカーフは、有松絞りという範疇を超えて、美しくアーティスティックでモダンなスカーフという印象。伝統という言葉より、アートという言葉の方が似合う風情だ。そしてその印象こそが、村瀬さんが目指す世界なのだという。
絞りに囲まれて育った村瀬さんだったが、もとより父親の仕事を継ぐ気持ちはなかったという。四代目の父親も、息子に継がせるということは言わなかった。
「小さい頃から有松絞りが当たり前すぎて、その価値に気づかなかった」と村瀬さんは言う。「それより、アートに興味があり、美大に行きたいと思っていました」。そう思い立ってからの村瀬さんは、アートをめがけて猛ダッシュ。国境を越えて、イギリス、そしてドイツへと向かう。