インドネシア森林火災記事への反論への再反論

「インドネシアの森林火災は、住民による焼き畑と異常乾燥が主な原因であると考えられています」との説明ですが、これは自社の責任から目を逸らそうとした、偏った説明ではないでしょうか。

もちろん、直接的な火入れに住民が関与した場合もありますが、実は企業の依頼を受けている場合もあると考えられ、一概に住民が主な原因であるとは言えません。記事(「インドネシア森林火災と、日本の紙消費・銀行業務」https://www.alterna.co.jp/29187/)に書いたように、企業の関与も多数報告されています。

2019年の記事で述べた「森林火災の責任」とは、意図的な火付けだけを意味していません。インドネシアの法律では、企業には事業管理区域内で森林火災が起きないように管理する責任もあると理解しています。サプライヤーを含むAPP関連企業については、事業管理地での火災が最も多く報告されており、そうした意味でも森林火災と煙害、それに伴う被害に大きな責任があります。よって、事業活動における火災防止対策は、企業が法律上行うべき管理責任の一環です。

また、「APPは1996年以来、『火入れ禁止』方針を厳守しており、植林開発で火を使っていません」と述べたり、また「APPは2013年2月に森林保護方針に基づいて自然林伐採ゼロを誓約し、7年間この誓約を守ってきました」とも述べていますが、その主張とは矛盾すると思われる事例が明らかになっています。

•ブミ・ムカール・ヒジャウ社の事例

APP社のサプライヤーで、同社がパートナー企業と認めたブミ・ムカール・ヒジャウ(BMH)社は、2014年に2万ヘクタールの森林火災を引き起こしました。森林火災の損害賠償裁判における判決(2016年8月)では、「森林火災に関連して違法な行為を行った」と認定されています。

インドネシア環境林業省と泥炭地の専門家による火災発生時に行われた調査では、火災に備える仕組みが十分に整っていなかったとされています。火災は特定の場所でのみ発生していて、隣接しているにもかかわらず、苗畑において火災は起きていませんでした。また火災後の跡地に違法にパルプ材の再植林をBMH社が行っていたことも見つかりました(2016年11月)。

そして違法な森林火災との関連で上級役員の一人が逮捕されました(2015年9月)。新レポートでは、2019年9月の火災の前に皆伐が行われて植林の準備が行われたという疑惑が発表されています。APPはBMH社をパートナー企業と認めており、サプライヤー企業でもあることからAPPの方針が適用され、同社の責任範囲に含まれていると理解しています。

•アララ・アバディ社の事例

APP子会社のアララ・アバディについても、泥炭地でのパルプ材植林地拡大のために、最近(2020年6月)火災が起こされたことが現地NGOから報告され、インドネシア警察への告発が行われています。火災はインドネシアの法規制違反であり、自社方針違反と考えられます。2015年以降、同社の事業管理地域内で火災が毎年のように発生しており、森林が焼失した総面積は1万2千ヘクタール以上と推計されています。

•APP子会社・関連企業による焼失面積は推定25万ヘクタール(2015〜2018年)

環境NGOグリーンピースによると、2015年から2018年の間に、APPの子会社、パートナー、サプライヤーによる総焼失面積は25万ヘクタールと推定されています。

サプライヤーであるパートナー企業7社については、事業管理地での広範囲におよぶ火災発生について、インドネシア政府の遵守命令もしくは事業一時凍結処分を受けたとの情報があります。そして上記7社のうち4社については、2015年の森林火災が危険なレベルの越境煙害を引き起こした疑いで、シンガポール政府から「越境ヘイズ汚染法(THPA)」に基づいて法的通知を受けました。同政府はこの4社への裁判が係争中であることを最近認めています。

•泥炭地開発による森林火災への影響

APPがコントロールしている企業やパートナー企業のサプライヤーは、インドネシア政府が指定した優先保護・復元区域を含め、合計3500ヘクタールの泥炭地で整地と排水を新規に行っていることもグリーンピースによって報告されています(2018年8月から2020年6月)。

このような泥炭地開発は自らの約束に反し、森林火災リスクを確実に高めています。森林火災の責任として問われるべき問題です。大規模かつ長期にわたる森林火災の重要な要因には、APP関係会社による泥炭地での植林地開発事業が含まれると考えられており、APP社の責任は大きいと言わざるを得ません。

3.『地域住民との数百にのぼる土地紛争に直面しているとされ、多数の未解決紛争を抱えつづけている』への反論について

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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