【連載】藻谷浩介の『ファクトで考えよう』(4)
中国の新疆ウイグル自治区での人権弾圧問題に、どう対応すべきか、頭が痛い企業は多いだろう。(藻谷 浩介・日本総合研究所主席研究員/オルタナ客員論説委員)
先般、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、決算発表の席上で新疆ウイグル自治区製の綿を使っているかと問われ、「問題があれば取引は停止している。政治問題にはノーコメント」と発言した。中国市場で事業が伸長している同社としては、これ以外に答えようがない。
中国での製造や、中国からの原材料の輸入は、他国へと切り替えていける場合も多いかもしれない。だが中国市場の代替物はない。コロナ禍の下での2020年4~9月(半期)、日本は中国+香港から計2.6兆円、米国から3.7兆円の経常収支黒字を稼いだ。合わせれば同期間の日本の黒字総額6.7兆円の9割以上であり、どちらかを取引相手として失うことは耐えられない。