ナイキが「環境・社会」で出来たこと・出来なかったこと

こうした取り組みに加え、同社ならではの観点で行われているものがある。それは人種間の不平等に対する取り組みだ。

労働や人事の項目では、「持続可能性評価の定義を満たす工場から材料を調達する」、「全従業員の多様性を重視する」、「超過勤務を減らす」といった目標があり、それぞれ改善が見られたとしている。2020年に女性が全従業員に占める割合比率は49.5%、インターンクラスの49%が米国での人種的マイノリティだ。

2025年目標では従業員の女性比率を50%、職場における条件を公平化し、人種的不平等に対処する組織を支援するために1億2,500万ドルを投資することなどを挙げた。

「ナイキ」ブランドにとって黒人アスリート、黒人カルチャーはとても重要だ。これ無くして同社が今の場所に立つことはできなかった。

同社は社会で根深い人種差別がはびこる中、中心的価値観の1つ「イクォリティ (平等)」を強く訴えていくとしている。

そのためナイキ、コンバース、ジョーダン ブランドおよびマイケル・ジョーダン氏で合わせて10年間で合計1億4000万ドルの拠出を含む、人種間の平等を進めるために注力する団体へのサポートなどを行なってきた。

人材登用では現在、女性は全従業員ベースの49.5%を占め、米国勤務のVP(ヴァイス・プレジデント)レベルでの人種と民族を見ると、マイノリティは、2020年には2015年から8ポイント増え29%となった。

また同社が世界中で展開しているこどもたちが遊びやスポーツで体を動かすことに取り組む「Made to Play」には多くの社員が参加している。2020年度には29カ国の6700人を超える店舗従業員が、子どもたちが活動的に過ごすことを推奨する活動のボランティアとして合計6万時間以上活躍した。

ドナホー氏は「私たちはまた、全ての意見を歓迎し、聞き取ることができる多様かつインクルーシブなチームやカルチャーをつくることにも注力している」と述べた。

「これまでの成功を誇りに思いつつも、長期的な取り組みであることを認識している。これからも主要な運営分野においての二酸化炭素排出削減に取り組み、チーム全体で多様化とインクルーシブを高め、子どもたちの遊びやスポーツとの接点を増やして行くために努めていく」

過去から学び、様々な意見を聞き取り、変化をおそれない姿勢こそがブランド価値向上のカギなのだろう。

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山口 勉(オルタナ副編集長)

大手IT企業や制作会社で販促・ウェブマーケティングに携わった後独立。オルタナライターを経て2021年10月から現職。2008年から3年間自転車活用を推進するNPO法人グリーンペダル(現在は解散)で事務局長/理事を務める。米国留学中に写真を学びフォトグラファーとしても活動する。 執筆記事一覧

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