世界3大広告賞の一つ「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(通称:カンヌライオンズ)」が6月21日から25日にかけて、今年はオンラインで開催された。応募作品数は2020年〜2021年の2年分の合算でも、2019年に比べて6%ダウンの2万9074件に。新型コロナ関連のキャンペーンが数多くエントリーされ複数部門で受賞する結果となった。本稿では今年の受賞作から世界のコミュニケーショントレンドとSDGsのこれからについて考察していく。(伊藤 恵・サステナビリティ・プランナー)

■コロナ禍でのブランドパーパスの表明 Dove “Courage Is Beautiful”

長らくDoveは「すべての女性が自分の美しさに気付くきっかけをつくる」をパーパスに掲げている。本当の美しさは見かけではなく、その人が何をするか。”Courage Is Beautiful”は、このパーパスをコロナ禍で闘う医療従事者を讃えることで表明したキャンペーンだ。

防護用ゴーグルや医療マスクを長時間装着することで、医療従事者の顔に痕が残ってしまうことが報道され始めると、それをいち早く取り上げクライアントへの提案から4日という短期間で制作、リリースされた。

医療マスクの痕が生々しく映された写真は、実際に登場する人々がセルフィーで撮影したもの。登場した人たちの勤務する医療施設の近くに個人名を入れたOOHを重点的に掲出することで、個人に焦点を当て、彼らの勇気を称賛した。プリント&パブリッシング部門のグランプリなど複数の部門でグランプリを受賞した。

SDGsを本業として取り組み評価されるH&M

環境負荷が高いといわれているファッション業界。その中でもファストファッションブランドの大手H&Mは近年サステナブルな取り組みに注力しはじめている。2030年までにすべての製品の素材をリサイクルもしくはサステナブルに調達された素材にすることを目標に掲げ、すでに57%の素材を変更。サステナビリティと品質の両立のために新しい技術ソリューションとイノベーションによる取り組みをおこなっていくことを宣言した。

その活動を消費者に伝えたキャンペーンが”Looop”だ。水と化学薬品を利用しないで環境負荷を低減しつつ、使用済みの服から新たな服を再生するテクノロジーを開発。ストックホルムの店舗では、来店した客が稼働しているところをガラス越しに見ることも可能にした。

環境に配慮したテクノロジーとともに、デザイン性の高さが評価されデザイン部門でグランプリを受賞している。ここで大事なポイントは”Looop”は単なる企業イメージアップや一過性の環境キャンペーンではなく、2030年に目標を達成するための投資の一環であるということだ。いかにSDGsが企業の本業と関連が深まっているのか、消費者に選ばれつづける存在であるために本気で取り組んでいるのかがうかがえる事例のひとつである。

H&Mは、コロナ禍で金銭的にスーツも買う余裕がない学生などの求職者をサポートする目的で、面接用に24時間スーツを無料で貸し出しするプログラム、”One/Second/Suit”でもブランドエクスペリエンス&アクティベーション部門のゴールドを受賞している。

ファストファッションを代表するH&Mのコミュニケーション活動のシフトは、あらゆる業界でSDGsを本業として取り組むべき時代がやってくることを示唆している。

ESG投資などによる株価への影響はもちろん、消費者の環境意識の高まり、それによる消費行動の変化ももう無視できるものではなくなりつつある。SDGsを地球の未来のためではなく、企業は自分自身の未来のための活動として取り組む。そんな企業がこれからますます増加することになるだろう。