■フロン排出抑制法 違反は処罰の対象に■

政府は2030年度における温室効果ガス削減目標を、2013年度比の46%減に引き上げた。代替フロンなど4種類のガスに関しても、高い削減目標を設定している。4種類のガスのうち3種類ではすでに目標を達成したものの、HFCに関しては逆に排出が倍増している。業務用冷凍空調機器からのフロン回収目標も、2020年度で50%という設定に対し、実際の回収率は2018年で38%と、目標に届かない。

こうしたことから、2020年にはフロン排出抑制法の罰則を強化した「改正フロン排出抑制法」が制定された。違反すると書類送検や罰金など処罰の対象になる。

業務用冷凍空調機器からの実際のフロン回収率は2018年で38%。
2020年度で50%という目標に届かない。

慶應義塾は、6キャンパス10学部の主に空調機器3999台に含まれる代替フロン類を三田の管財部で管理している。冷媒管理システム「RaMS」(ラムズ)の導入で、点在する各キャンパスから業者が必要なデータを入力できるようになり、管財部の負担は大きく軽減された。今年度からは学内の体制も変わり、環境問題の学内取り組みに関する数値目標の設定も進んでいる。(連載・PR)

第2回:学校法人慶應義塾 
管財部 施設担当 鈴木 健史 課長
聞き手:香川 希理 弁護士(香川総合法律事務所代表)

――慶應義塾の概要をあらためて教えていただけますか。

慶應義塾 管財部 施設担当 鈴木健史 課長

1858年に福澤諭吉が設立した蘭学塾からスタートした、日本で最も歴史の古い私立総合大学です。2008年に創立150周年を迎えました。

今は総合大学として、東京と神奈川に6キャンパス10学部、14の研究科があり、信濃町には大学病院もあります。大学のほかには一貫教育校として小学校2校、中学校2校、中高一貫校が4校、高校が4校あるほか、タウンキャンパスもあります。大学の学生数は現状33000人、教職員は3000人弱います。

――キャンパスや付属校が点在されているのですね。空調システムの管理はどのようにされているのでしょうか。

運転管理・保守管理は各キャンパスを通じて、常駐している外部の業者に委託し、さらに出力7.5kw以上の機器についてはそこから年1~2回、専門業者が点検しています。一貫教育校は施設管理の部門がないため、近隣の大学キャンパスの施設部門から業者に依頼しています。

これまではキャンパスによって点検業者も点検簿の記載方法も異なり、別々のエクセルシートを管財部で再度入力し、集計する作業にも手間がかかっていました。記載もれがある場合に、機器状況の確認依頼を各キャンパスに出すのも大変でした。

――それでシステムの導入を検討されたのですね。ご検討の経緯や最終的にRaMSに決定された決め手を教えてください。

設備機器の保守管理データを管財部で一括管理したい、管理にはシステムを活用し効率化したいと考え、2018年8月に検討を開始しました。そのなかでフロン管理システムについては機器メーカー提供のシステム、エネルギー管理業者や商社が提供するシステムなど、複数検討しました。

何より法対応の部分では、専門でシステムを構築し、「情報処理センター機能」で、1台1台の点検記録を帳票形式で保存できるRaMSに強みがありました。機器メーカーが提供するシステムはメーカー色が強かったこともあり、複数メーカーの機器を使っている当校としては、中立性の高いものを選びました。

――導入後のメリットはいかがでしょう。

RaMS導入により、外から点検業者がアクセスし、入力できるようになった

これまでは、キャンパスごとに異なるフォーマットで入力されたデータをこちらで再度入力し、集計することが必要でしたが、RaMSは外から点検業者がアクセスして入力していただけます。私たちはデータを確認のうえ承認すればよくなり、大きな負担軽減になりました。フロン排出量などもクラウドで管理できます。

当初2766台で登録した設備機器は、現在3999台となっています。導入時は機器の総数管理が不充分だったのですが、RaMSを活用することで抜け漏れも把握できました。法令遵守のためには大切なことです。

運用を開始してはいますが、うまく運用できているキャンパスとそうでないところがありますが、そうした状況も含めて管財部が全キャンパスを一覧で把握できることは大きなメリットです。システムを使い慣れない担当者へのサポートもしやすいです。

設備機器の運転監視の部分は、他のシステムを使っています。フロンガスの管理と一緒にできるのが理想ですが、フロン排出管理と運転監視のシステムは、切り口が少し異なるため、今は別々に使っています。

――経営層の脱炭素やフロンへの考え方、法律改正への理解度についてはいかがでしょう。

脱炭素への取り組みとしては、経産省や自治体の目標値を守り、省エネに取り組んでいます。ただ代替フロン問題については、まだ認知が高くないのが現状です。機器更新の決裁の際に法改正への対応が必要であることは説明していますが、経営層として全体像を把握するまでには至っていません。

部署としては、代替フロンを変更する必要性は認識しており、機器更新のタイミングで新たな冷媒に代替しています。実際には市場に出ている製品から、法対応済のものを選んでいます。冷媒の種類をかなり変更したメーカーもありますし、サイズによっては対応できていない機種もありますが、都度、選べるものを更新しています。

今年5月に塾長が理系の教授に替わり、経営層にも理系や医学系の先生が増え、環境問題に関して数値的な目標設定が進んでいます。代替フロンに関する情報も、我々の部署から積極的に学内に発信し、認知向上につとめたいと考えています。

聞き手:香川希理弁護士(香川総合法律事務所代表)

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JRECO(一般財団法人日本冷媒・環境保全機構)とは

一般財団法人日本冷媒・環境保全機構は、冷凍空調機器からの冷媒フロン類(CFC、HCFC、HFC)の大気放出抑制、使用の合理化及び管理の適正化に係わる事業の推進を、関係事業者との連携及び行政当局との協調のもとで実施している。

事業の一環として2015年に施行されたフロン排出抑制法の遵守ツール「RaMS」をクラウドで提供する。「RaMS」には主務大臣から認可された「情報処理センター」機能を含み、書面によらない一元管理とデータ解析によるDX推進が可能だ。

RaMS(冷媒管理システム)とは

RaMSは第一種特定製品(業務用冷凍空調機器)とその冷媒の管理ができるクラウドシステム。経済産業省と環境省から認可された情報処理センター機能を包含し、法により管理が義務付けられている全書面を電子的に改正法に準拠した形で管理でき、フロン排出抑制法を遵守することが可能になる。

機器の所有者にとって、法遵守のための機器の総棚卸しは煩雑で負担が大きな作業だが、RaMSを活用することで少ないリソースで管理できる。経営に活かせるデータの解析や温対法算出も可能だ。

代替フロンやRaMSについて詳しく知りたい方はこちら→ yamamoto(a)jreco.or.jp

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