神戸の老舗が開いた「サステナブルベーカリー」

パンで社会課題を解決する創業75年の老舗ベーカリー「ケルン」(神戸市、壷井豪社長)は、同社初のサステナブルベーカリー「日々ケルン」を9月4日に、JR摂津本山駅前(神戸市東灘区)にグランドオープンした。(山口勉)

フードロスに配慮したパン作りや食材の販売に取り組む「日々ケルン」

社会全般でSDGsへの関心が高まるなか、ベーカリー業界においても長時間労働や廃棄ロスなど様々な課題解決が求められている。

同社は顧客とともに循環型社会の実現を目指すことを経営方針としている。そこで、ベーカリーで買い物を楽しむことで、世の中に好循環を生み出すサステナブルベーカリー 「日々ケルン」をオープンした。パンに携わる人々が幸せになれる持続可能性の高いベーカリーを目指す。

同店では、フードマイレージの観点から近隣の兵庫県産や滋賀県産の小麦を使用する。さらに農家 「アクアヴェルデ」(南あわじ市)が栽培した高糖度トマト「プチぷよ」を使用するなどトレーサビリティにも配慮する。

同店は社会課題解決に取り組む事業者とも提携する。

「八百屋のタケシタ」(神戸市)の不選別野菜(※)を使用し、入荷する野菜に合わせて、熟練のパン職人がレシピをアレンジすることで、顧客に様々なパンを楽しんでもらいながらフードロスの解消を目指す。

※不選別野菜:一般流通で決められている「形・見た目・大きさ」等の規格で選別していない不揃い野菜。

「八百屋のタケシタ」の不選別野菜や、自家焙煎店「LANDMADE」(神戸市)のテイクアウトコーヒーの販売も行う。「LANDMADE」のスペシャルティコーヒーを購入することで、海外のコーヒー豆生産者の支援につながる。

スペシャルティコーヒーは、生産者に直接対価を支払うこと(ダイレクトトレード)で、相場に左右されることなく生産者を貧困から守り、フェアトレードよりも更に直接的な支援を可能にする。

パンとコーヒーの売上高の一部は小児がん専門治療施設 「チャイルド・ケモ・ハウス」(神戸市)の支援にも活用するという。

店舗内装には六甲山の間伐材を一部活用することで、自然の恵みを感じる空間にした。

「日々ケルン」の店内イメージ

さらに同社は全事業所の電力を、CO2ゼロの実質自然エネルギー100%の「ハチドリ電力」(ボーダレス・ジャパン、東京都新宿区)に切り替えており、「日々ケルン」の電力も切り替えた。

今後は周辺の大学などと連携して、大学生らがSDGsを学べるセミナーや地元農家の野菜でつくる料理教室など、日々の暮らしのなかで社会課題にふれられるイベントを定期的に開催する予定だ。

同店はフードロスに配慮したパンづくりや産学連携で、社会課題解決の地域拠点を目指す。

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山口 勉(オルタナ副編集長)

大手IT企業や制作会社で販促・ウェブマーケティングに携わった後独立。オルタナライターを経て2021年10月から現職。2008年から3年間自転車活用を推進するNPO法人グリーンペダル(現在は解散)で事務局長/理事を務める。米国留学中に写真を学びフォトグラファーとしても活動する。 執筆記事一覧

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