人口9600人ほどの小さな町、長野県北安曇郡池田町で2019年から教育長を務める竹内延彦さんは、「子どもがまんなか」の基本理念と「保小中15年プラン」などの基本目標を掲げる教育大綱に基づき、保育園・小学校・中学校の接続を意識的に進めている。年3回開催している保育士と教職員の合同研修会には、ほぼ全員の先生が参加し、思いと実践を語り合うという。(三原 菜央=スマイルバトン代表)

保・小・中の15年プラン

人口9600人ほどの小さな町、長野県北安曇郡池田町で2019年から教育長を務める竹内延彦さんは、「子どもがまんなか」の基本理念と「保小中15年プラン」等の基本目標を掲げる教育大綱に基づき、保育園・小学校・中学校の接続を意識的に進めている。

「小さい自治体だからこそ、子どもが生まれてから中学校を卒業するまでは、全員で面倒を見ましょうという意識を大事にしています。例えば中学校の先生は、子どもたちが保育園のときの様子は知らないですよね。でも、保育園や小学校の頃の様子を知らないままに中学校から関係をつくり始めると、どうしても子どもの本当の姿は見えにくい。子ども一人ひとりが多様な存在であることを受け止め、一人ひとりに合ったサポートを実現するために保・小・中の連携に力を入れています。小規模だからこそ、先生同士、子ども同士の交流がしやすいというのはありますね」

長野県北安曇郡池田町の教育長・竹内延彦さん

「子どもがまんなか」の学校と地域づくりに挑戦されている竹内さんだが、学生時代はカウンセラーを志していたそうだ。そして不登校の分野に関心を持ち、修士論文のテーマを決める過程で「東京シューレ」というフリースクールの存在を知る。

「今でこそフリースクールは認知されていますが、当時は大学の先生でさえよく知らなかったのです。最初は論文目的で伺った場所でしたが、活動そのものに好奇心が高まり、ボランティアからアルバイト、正規のスタッフになり、結局5年ほど働きました。このフリースクールとの出会いがなければ、私はいまだに学校教育制度に疑問を持たないまま、“不登校の子どもは問題がある”みたいなことを平気で言っている人間になっていたかもしれません」

■学校が子どもに合わせるべき

「今でも覚えていますが、フリースクールに行った初日(1991年4月8日)、『子どもが学校に合わせるのではなく、学校が子どもに合わせるべきだ』という代表の方の言葉に大きなカルチャーショックを受けました。学校に対するそれまでの価値観が180度変わってしまったのです」

東京シューレには相談や見学の申し込みが連日入っていたと言う。ウェイティングリストが半年先まで埋まっているのを目の当たりにした竹内さんは、カウンセリングで子どもたちを一人ひとりサポートするよりも、フリースクールのような場所を増やすことの方が、はるかに救われる子どもたちが多いだろうと、考えが変わっていく。

「子どもたちがフリースクールという居場所で、子ども同士の関係の中でどんどん元気になっていく姿や、自分の目標を見いだしていくような変化を目の当たりにしたことで、フリースクールような学校以外の居場所をもっと増やさなくてはいけない、そもそも学校という環境、学校教育の制度そのものを変えていくということが、不登校などの抜本的な解決につながるのではないかと、自分の考えが変わっていきました」

フリースクールを辞めてからも、学校教育制度が多様化されることを目指して、NPO活動や行政の立場から、学校教育制度を子ども本位の姿に変えるためのキャリアを歩まれている竹内さん。これからも教育長としての挑戦は続く。