パーパスを通じて中長期の企業価値向上を図るパーパス経営の重要性が日本でも問われています。ソニーグループのパーパスは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というもので、吉田憲一郎CEOが2019年に全社員と作り上げました。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

2018年4月に就任した吉田CEOがブログで「ミッションを見直したい。社員の皆さんの意見が欲しい」と、全世界の11万人の社員に呼びかけたことがパーパス作りのスタートです。
当時はパーパスをつくろうということではなく、ミッション、ヴィジョン、バリューをもう一度見直そうという取り組みでした。
その過程で海外にはパーパスという考えがあると知り、パーパス&バリューすなわち存在意義と価値観をグループとして定めたという経緯があります。
パーパス&バリューの浸透の為、世界中にポスター配布、CEOのレター配信、ビデオ作成や、吉田CEO自らの世界の事業拠点でのタウンホールミーティングを行いました。
同CEOは「Corporate Report 2021 統合報告書」のCEOメッセージの中でパーパスの重要性を次の様に強調しています。
「ソニーが持続的に価値を創造していくためには、戦略立案よりも実行力が重要であり、その実行力を担保するのは、パーパスに支えられた企業文化」
「パーパスに共感できてこそ、多様な人材が情熱を持って仕事に取り組むことができ、社会への価値創出につながるはず」
「Corporate Report 2021 統合報告書」編集方針では、その発行意義を「中長期の価値創造に向けた経営方針、事業戦略など財務情報と非財務情報を総合的にステークホルダーに報告するもの」と述べられています。
一方、「マテリアリティ」の記述は統合報告書でも記述がありますが、メインの記述はサステナビィティレポート2021となっています。
レポートでは、「ステップ1: マテリアリティ候補項目の抽出・整理」「ステップ2: 自社視点およびステークホルダー視点での評価の実施」「ステップ3: マテリアリティ項目の特定」とマテリアリティを決めたプロセスが示されています。
ステップ2の中では「投資家やCSRに関する社外専門家との意見交換を通じたステークホルダー視点での評価」と記載されていますが、どの様な投資家や社外専門家とどの様な意見交換がされたのかと言う具体的プロセスの記述がされていません。
ステークホルダー報告視点という編集方針であれば、他のステークホルダーの参考となる建設的な論議内容などの具体的記述の記載が統合報告書でも必要ではないでしょうか。