LGBTQの課題解決に必要な資金を試算してみる

私たちは2022年春、大阪でLGBTQに関するセンターPrideCenterOsakaを設立することを決め、資金集めに奔走している。センター運営に必要な資金がどのくらいになるのか、試算してみた。

2021年、私たちはLGBTQに関する3年間(2018年〜2020年)のアンケート調査から、7162名の声をまとめた「職場のLGBT白書」を制作した。職場の施策が少しずつ増えているのは明るいニュースだが、残念ながら取り組みは大手企業に偏っていた。職場による格差が広がり、LGBTQのメンタルヘルスには改善が見られなかった。

この2年間、新型コロナウイルスの感染拡大で社会が大きく傷つく中、元々、非正規雇用が多く、メンタルヘルスも悪い傾向にあるLGBTQは、もし統計を取れば、一般よりダメージを受けているのではないかと予想される。

しかし、何度もこの連載で指摘しているが、日本政府はそうした基礎データさえ持っていない。研究グループによってLGBTのうつや自死による社会的損失が推計されているが、それは年間で数千億円である

LGBTQの自殺・うつによる社会的損失

私たちに今できることは何か、と団体で検討し、地元の大阪でLGBTQに関するセンターを設立することにした。

東京には「プライドハウス東京レガシー」という施設が2020年からあり、複数のNPO、企業等のコンソーシアム形式で運営が行われている。大阪では東京より機能を絞って、交流、相談、学び(ミニ図書館)に特化したスペースにしようということで場所を探し、無事に天満橋という大阪城近くの歴史ある場所に設立できることになった。春にオープン予定で、現在、急ピッチで準備を進めている。

しかし、いざ走り始めてみると、なかなかお金がかかる。理想的な運営をしようとすると、以下のような感じで、初期費用で670万円、運営費用で年に約2000万円かかる。もちろん、地域によって工夫できるところはあると思うが、恐らく東京や大阪ではこれでもまだまだ足りない。

初期費用(モデル)

改装費用・書籍等備品5,000,000
パンフレット作成500,000
ウェブサイト構築等1,000,000
雑費200,000
合計6,700,000

運営費用(モデル)

スタッフ人件費(4名分)1,000,000
スタッフ法定福利費200,000
センター家賃300,000
水光熱費20,000
事務用品費20,000
イベント費用50,000
事務用品費10,000
印刷製本費10,000
通信費20,000
雑費10,000
月あたり1,640,000
年間19,680,000
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村木 真紀 (認定NPO法人虹色ダイバーシティ代表理事)

認定NPO法人虹色ダイバーシティ代表(理事長)。社会保険労務士。茨城県生まれ、京都大学総合人間学部卒業。日系メーカー、外資系コンサルティング会社等を経て現職。当事者としての実感とコンサルタントとしての経験を活かして、LGBTに関する調査研究や社会教育を行う。著書「虹色チェンジメーカー」(小学館新書)執筆記事一覧

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キーワード: #LGBT

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