北京冬季五輪の開会式を前に、日本ウイグル協会などは2月4日、中国大使館前でボイコットを訴える抗議デモを行った。同協会のレテプ・アフメット副会長は「オリンピック自体に反対しているわけではない」としたうえで、「『平和の祭典』として北京五輪を開催することは、中国で起きている人権問題を容認することになる。私たちにとって悲しい『涙』の北京五輪になるだろう」と訴えた。(オルタナ副編集長=吉田広子)
中国大使館近くの交差点には、日本で暮らすウイグル人のほか、チベット、南モンゴル、香港の出身者らが集結。グループごとに大使館前に移動してデモ活動を行った。
彼らが「北京五輪の開催を許さない」「弾圧を止めろ」「ウイグル、チベット、南モンゴル、香港に人権を」といったシュプレヒコールを上げるなか、デモに対抗する集団は「国に帰れ、ボケ」「バカやろう」といった野次を飛ばす。警察が誘導するなか、デモは1時間ほど続いた。
「友人や家族が理由なく拘束され、どこでどうなっているか、生きているのかさえ分からない。家族の安否も確認できず、基本的な権利まで奪われている。こうした人権侵害が起きている状況で、疑念を払拭せず、何事もなかったように、『平和の祭典』として北京五輪を開催することは人道的に許されない。強制収容所に収容されたアスリートもいる」
日本で暮らすウイグル出身のアフメットさんは憤りを語る。アフメットさんは2002年に東京大学大学院に留学し、その後、日本で就職。日本国籍を取得した。ウイグルの家族や友人とは2017年夏以降、連絡が取れていないという。家族が人質に取られ、過去に中国当局からスパイ活動を要求されたことも打ち明ける。
「中国政府は人権問題を改善するという約束のもと、オリンピック・パラリンピックを招致した。実際には何も変わらず、犯罪行為は続いている。そうした地で、五輪を開催すること自体、国際社会がお墨付きを与えることになり、人権問題を容認することになる」と話す。
「いつもはわくわくした気持ちでオリンピックを楽しむが、今回は目にするたびに、安否が不明な家族や影に隠れたウイグル人の苦しみを思い出すことになるだろう。いまさら開催を止めることはできないのは分かっているが、このまま進んで良いのか。もう一度目を向けてほしい。悲しい『涙』の2週間になりそうだ」(アフメットさん)
「いつか全容が明らかになる時が来る」
国際人権NGO243団体などはこれまで、スポンサー企業にも北京五輪を支援しないように訴えてきた。NGOやBBCなどがコメントを求めても、企業は沈黙したままだ。
「私はオリンピックそのものを反対しているわけではない。スポンサー企業が、立場を明確にし、何らか発言したり、行動したりしたうえで、支援するなら理解できる。被害者からの訴えを無視して何事もなかったかのように、北京五輪を開催して良いのか。何ら発言することなく、目先の利害関係を優先しているのではないか」(アフメットさん)
最高位となる大会のトップスポンサーは、Airbnb(エアビーアンドビー)、アリババ、アリアンツ、アトス、ブリヂストン、コカ・コーラ、インテル、オメガ、パナソニック、P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)、サムスン、トヨタ、ビザの13社だ。
アフメットさんは「多くの企業は、中国と利害関係がある。しかし、商売さえうまくいけば、犯罪に加担しても良いのか。いつになるかは分からないが、いずれ全容が明らかになる。そのときに社会的責任が問われることになる。いまからでも遅くない。目先の利益にとらわれず勇気をもって発言してほしい」と訴えた。