がんになっても安心して暮らすことができる社会のために②
高齢化が加速する日本では、統計的におよそ2人に1人が生涯において1度はがんと診断される。がんと告知されてから、治療期間、経過観察期間、そして治療を終えてもなお、がんサバイバーを取り巻く課題は多岐にわたり、その1つ目の関門が告知から治療開始までの期間である。医療においても適切な情報を得ることが重要とされ、告知から治療が開始されるまでの短期間で病状を把握し納得のいく治療方法の選択を行うためには、がんサバイバー(当事者)となる前に、知っておきたいことがある。
がんになる前に知っておくこと
筆者が、がんに関する情報の重要性を感じたきっかけは、映画「がんになる前に知っておくこと」※1である。
この作品は、かつて「乳がんの疑いあり」と診断された経験を持つナビゲーターが、がん治療を専門としている腫瘍内科医、外科医、放射線腫瘍医をはじめとした医療者やピアサポーター※2、がんサバイバーなど15人との対話を通じて、がんについての基本的な知識を学んでいくドキュメンタリーであった。
がん=死というイメージが根深く残っている現状に対し、がんの治療法、痛みや副作用・精神的な不安を和らげる緩和ケア※3などの基本的な情報、体験者の声などを通じて、「もし自分ががんになったら…」とシミュレーションを行うきっかけとなった。
国立がん研究センターが運営する公式サイト「がん情報サービス※4」では、がんの基礎知識、診断と治療、症状への対応、食事、心のケア、がんにまつわる制度やサービス、生活への影響と工夫、家族のサポートなど様々な項目を丁寧にわかりやすく掲載している。興味のある項目を読むだけでもいい。ここに基本情報があることを知って頂きたい。
がんと告知を受けたら、相談できる場所がある
全国に405ヵ所(2021年4月時点)ある「がん診療連携拠点病院※5」には、「がん」について誰でも、どんなことでも相談するができる「がん相談支援センター」が設置されている。
「がん相談支援センター」では、がん治療を専門とする医療者が、治療や副作用ケア、治療費、不安やストレスなど、多岐にわたる相談に対面や電話などで対応してくれる。しかし、残念なことにその病院でがん治療を受けている患者ですらその存在を知らないまま過ごすことが多い。
がんの告知を受けた直後に治療方法や手術日程が決まってしまうことも珍しいケースではないし、多少の時間的猶予があったとしても、告知を受けてから治療が開始されるまでの期間は大きな不安に苛まれる時期であり、自身に適した情報を収集し判断することは非常に難しい。
そんなとき、ぜひ地域のがん診療連携拠点病院の「がん相談支援センター」や「ピアセンター」に相談し、不安を和らげるとともに正しい情報を得て納得のいく選択をするためのサポートを受けて欲しい。