2022年3月11日、東日本大震災から11年を迎えた。NPO法人石巻復興支援ネットワーク(通称「やっぺす」)は、変化が見えにくく、停滞感に陥りやすい今の時期を「復興の踊り場」と表現する。当初10年間と想定されていた東日本大震災の復興期間は延長され、復興庁は2031年を設置期限としている。短くない年月を経て、今どのくらい復興したのか。石巻で活動する2つのNPOは複合化した社会課題に取り組み続けている。(非営利組織評価センター=村上佳央)

東北3県で人口が6.6%減少

岩手・宮城・福島の人口は震災前と比べて6.6%減少している(全国平均は1.9%減少)。もともとの高齢化に加え、震災で亡くなった方や避難先に定住する人もいる。石巻市では女性の市外に転出するケースが多い。

「停滞感が、被災された方の精神的な負担を増加させます。これから10年以上長期に渡り復興を支えていく必要があります」

そうメッセージを発信するNPO法人やっぺすは、石巻市の「お母さん」たちが子育て支援・次世代の人材育成を行う団体だ。震災から10年間活動を続けている。

「私達やっぺすは、『私らしく生きるが叶えられるまち』を目指し、女性活躍推進・子育て支援・復興支援活動の3つの分野で活動を行っています。『やっぺす』とは、石巻の方言で、一緒にやりましょうという意味です。地域住民、 企業やNPO、行政等と協働し、地域の課題解決に取り組んでいます。居場所づくりや活躍の場、機会を創出し、孤立しがちな子育て中のママ達、未来を担うこども達等、地域の1人1人をエンパワーメントすることで、活気のある住みやすいまちづくりを目指しています」(石巻復興支援ネットワーク)

子育て環境が悪化、心の健康と遊び場を守る

石巻市の子育て環境は震災後に悪化している。石巻市の小中学生の不登校率は2.5%(1000人当たり25.9人、2020年度)。震災前の2010年度と比べて中学生は1.56倍、小学生は3.24倍も増加した。狭い仮設住宅での生活が続き、体を動かす校庭や公園が減ってしまったことも関係している。

「石巻市には、14万人の人口に対して、子どもの居場所と定義づけられる児童館やプレーパークが1軒しかありません。これは驚異的に少ないと言えます」

そう教えてくれるのは、認定NPO法人「こども∞(むげん)感ぱにー」の田中雅子代表だ。保育士として児童養護施設やフリースクールなど、子どもの社会的擁護の現場で働いてきた田中さんは、東日本大震災直後の石巻を訪れ、まちに子どもの姿が見えないことに気付き、地域住民に声を掛けながら手づくりで遊び場をつくっていった。

「東日本大震災により、子どものあそび場や居場所が姿を消した宮城県石巻市で、プレーパーク(屋外型児童館のようなもの)事業とフリースクール(不登校の子どもの自立支援)事業を2つの柱に活動しています。 今、子どもが自由に、思い切り遊べる環境が少なくなっています。どろんこ遊びや作りたいものを工作した経験のない子も増えています」

「また、親や教師以外で、悩みや喜びを共感してくれる大人の存在も少なく、子どもの孤立、虐待の発見の遅れ、不登校が増え続けていることは大きな社会課題となっています。私たちは、プレイワーカー(子どもに関わる専門スタッフ)を配置し、安心して過ごせる居場所をつくり続けることで、子どもが抱える社会課題を一つ一つ減らしていきたいと考え活動しています。 そして、子どもの『遊びを保障』し『居場所を保障』する場を増やすための取り組みを行っています」(こども∞感ぱにー)

東北3県でNPOが5割増、多様な担い手に期待

岩手・宮城・福島3県のNPOの数は震災前と比べて48%増加した。震災の被災者支援をNPOなどが担っていた一方で、復興予算に紐づく補助金・助成金や企業寄付の大部分は終息している。

石巻市の2つの団体は11年目以降の運営資金として個人寄付の募集に力を入れる。いまの石巻市の課題がウェブサイトに分かりやすくまとめられ、誰もが寄付やボランティアを通じて今後の復興を応援することができる。また、寄付者や支援者に対する信頼性の証として「グッドガバナンス認証」を取得した。

復興庁が作成した『復興支援に向けた多様な担い手のロードマップ』には、被災地の多様なニーズに柔軟に対応するには「担い手としての女性の参画に留意する」とあるが、奇しくも今回紹介したのは女性が中心となって声をあげた団体だ。

女性や子どもなど多様な担い手が育ち、支え合い、みんなで課題を乗り越えていく石巻が、今後の復興において求められている。