企業と社会フォーラム(JFBS)第10回年次大会

学会「企業と社会フォーラム」(JFBS)は、2021年9月2日ー3日、「サーキュラーエコノミーを目指して」を統一テーマとする第10回年次大会をオンライン(Zoom)で開催しました。本大会のセッションの中から、今回は企画セッション3「サステナブルファッション:ファッション産業における3R(リデュース、リユース、リサイクル)と認証」における報告・議論内容をご紹介します。(企業と社会フォーラム事務局=齊藤 紀子)

■ファッションのサステナビリティを評価する

本セッションでは、アンジェラ・オルテス氏(NPO プレイス トゥ グロウ創設者兼CEO)、カイル・パーソンズ氏(インドソール 創業者兼CEO)、田中健二氏(ゴードン・ブラザーズ・ジャパン社長)、渡邊佳寿美氏(ピーターソンプロジェクツ&ソリューションズジャパン社長)より、ファッション産業においてサステナビリティを確保するための取り組み内容が紹介されたのち、ディスカッションがなされました。

セッション冒頭にモデレーターの雨宮寛氏(アラベスクS-Ray日本代表)より、ファッション産業におけるサステナビリティパフォーマンスについて、トピック紹介がなされました。

アラベスク社は企業のサステナビリティパフォーマンスを評価するサービス「アラベスクS-Ray」を展開しています。同サービスでは、UNグローバル・コンパクトの定める4分野「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の観点から評価するGCスコア、事業活動で財務的に重要なESG課題について企業のパフォーマンスを評価するESGスコアなどを用いています。

GCスコアおよびESGスコアは0-100で表示され、平均スコアは50となっています。ファッション産業については、世界中の株式上場しているアパレル企業約130社を評価対象としています。これら企業のスコアをみると、企業によってばらつきはあるものの、全産業の平均値よりもパフォーマンスが良いと言えることが示されました。

■リニアからサーキュラーへ

アンジェラ・オルテス氏(NPO プレイス トゥ グロウ創設者兼CEO)からは、H&Mとアディダスによる取り組みの紹介がなされました。2011年の東日本大震災以降に復興活動として宮城県にてNPOプレイス トゥ グロウの活動を展開するオルテス氏は、H&MやアディダスでのCSR業務経験を有しておられます。

いまなぜ企業はリニアエコノミーからサーキュラーエコノミーに移行しようとしているのか、それは気候変動や生物多様性の問題を解決するツールとなるからであり、温室効果ガスや廃棄物などを減らし雇用を増やしレジリエンスを高めるからであると説明がなされました。

H&Mではサプライチェーンにおける環境負荷を減らすため様々なプロジェクトに着手しました。例えば2013年にファッション産業では最初に衣料回収プロジェクトに着手し、不必要になった衣料品を店舗に持参してもらいリサイクルする取り組みを始めました。

同プロジェクトでは廃棄衣料の量をグローバルレベルで調査・把握しています。他にもエネルギー効率を高めるために日本国内店舗の照明をLEDに交換したり、取引先企業において古い設備を使い続けてエネルギー使用量が大きいところとは契約を終了したり、再生エネルギーを導入するなどの措置を講じました。

しかしながらこうして回収された衣料は東南アジアやインド、アフリカなど新興国に必要とされないにもかかわらず送られて、ネガティブ・インパクトを生んでいるのが現実です。そこで香港の大学と共同で2019年に、プラスチックと綿が混ざった状態でもリサイクルできる工場を創りました。

水も染料も使わず、振興国に押し付けることもない、環境に優しい新しいシステムです。H&Mのような規模の大きなグローバル企業がこうした投資や技術開発を行うことで、規模のより小さな企業もそのような技術を利用できるようになります。

アディダスは商品の8割においてプラスチック素材を利用しているため、どれほどその利用量を低減できるか注力している企業です。海洋プラスティックゴミを収集し、分別し、洗浄し、台湾にある工場で裁断し、繊維にしてシューズをつくる取り組みを2018年より行っています。

H&Mもアディダスも、消費者の協力を得るため、商品を長く使うためのコツを発信するなどウエブサイトを活用したコミュニケーションを展開しています。将来世代のために、現世代の私たちが学び、セルフマネジメントでき、創造的イノベーターとして参加し、実践できるようにコツコツと働きかけることが重要だとの考え方が示されました。

■古タイヤをサンダルに

続いてカイル・パーソンズ氏(インドソール 創業者兼CEO)から、同社の取り組み紹介がなされました。

インドソール社は2009年に設立された、環境保護をビジョンに掲げB corp認証を受けているサンダルメーカーです。インドネシア・バリへの渡航経験が多かった父親の影響によりバリへの関心を持ち続けたパーソンズ氏は、2004年にはじめてバリを訪れました。

町なかで破損したサンダルを履く人や裸足でいる人をみかけたことから、サンダルを売る店舗に入ったところ古タイヤを使ったサンダルに出会い、これが大きなヒントとなりました。

インドネシアでは廃棄プラスチックや廃タイヤが大きな問題になっています。河川や海洋、道路脇などあちこちに廃棄されたタイヤからは有毒な化学物質が放出されるうえ、燃えやすく一度火がつくと大気をひどく汚染します。そこで古タイヤを活用したサンダル・ブランドの立ち上げに至りました。

当初は寄贈された古タイヤを手作業でカットし、縫製し、小物などもつけて販売するスタイルをとっていましたが、これでは大きなインパクトをうむことができないと考え、古タイヤを加工してパウダー状にし、靴底を創るという製造方法に変更しました。非常に長持ちするこの靴底はリサイクルタイヤ40%、天然ゴム30%、新素材30%でできています。

同社は他企業との協働にも積極的で、これまでにGoogleやNGOシーシェパードにも同社のもつ技術を提供してきました。また廃棄されたスニーカーからスニーカー用靴底をつくる取り組みも新たに始めました。

インドネシアにとどまらず、アメリカ、日本、オーストラリア、欧州16カ国などグローバル展開もはじめており、今後より大きなインパクトを生み出したいとのことです。

田中健二氏(ゴードン・ブラザーズ・ジャパン社長)からは、アメリカゴードン・ブラザーズと日本政策投資銀行の合弁会社として2006年に設立された同社の取り組みについて紹介がなされました。

同社は「私たちは価値の本質を見極め、その『価値』が活かされる社会を創ります」をミッションステートメントとして掲げ、評価事業、換価事業、融資・出資事業を展開しています。

たとえばシェアリングサービスを提供する企業向けの資金支援も実施しています。これら事業の中でもユニークなものとして、アパレル企業に対する在庫管理計画立案・実施および流通販路の最適化などにかかるコンサルティングサービスを実施しています。

コロナ禍においてはブランドの廃止や不採算店舗などが大きな課題になっており、日本国内だけでもサービス対象企業は50社以上にのぼります。

現状、リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの転換が求められていますが、アパレル業界ではサーキュラーエコノミーに至っている企業はごくわずかであり、多くがリニアあるいはリユースエコノミーの段階にあります。

SDGsニーズと経済の両立に困難がともなうのも現実であるため、同社では原材料調達、製造、流通、小売、消費の各段階にかかわり、Eコマース、閉店セール、イベントセール、「&Bridge」というディスカウントストアでの販売サービスなどの支援を実施しています。

■認証制度の活用も

最後に、渡邊佳寿美氏(株式会社ピーターソンプロジェクツ&ソリューションズジャパン社長)から、繊維業界によるサーキュラーエコノミーへの取り組みを促進する認証制度が紹介されました。

同社は農業・エネルギー・林業・製造業・繊維などの多様な業界におけるサプライチェーン全体のサステナビリティについて70カ国以上でコンサルティングサービスを提供しています。繊維業界では過去20年間に生産量が倍増し(コロナ禍で200万t減ったものの)1億900万tにもなりました。

このままのペースでは2030年には1億4600万tに達すると推定されています。環境汚染や政府による規制、消費者による要請、NGOによる圧力などを背景に、いまサーキュラーエコノミーへの転換にかかる社会的要請が強まっています。NGOや政府機関などによる認証制度が多くある中で、サーキュラーエコノミーのための認証制度として次の3つがあります。

「グローバル・リサイクルド・スタンダード(GRS)」は、製品 (完成品および中間品) が含むリサイクルされた原材料(20%以上)や加工流通過程管理を検証するもの、「オーシャン・バウンド・プラスティック(OBP」」は、海洋投棄される可能性のあったプラスチックから作られた商品を認証するもの、「国際持続可能性カーボン認証(ISCC PLUS)」は、サプライチェーンの化石原料使用を減らしバイオマス化を促進するべく、バイオマスから生成されたエネルギーや燃料の認証を行うものです。繊維業界の多くの企業がこれらの認証取得に向けて動いています。

いま環境・社会への配慮の必要性について若い世代の関心が高まっており、認証マークの認知度を高め倫理的消費を促進する、企業の取り組みを分かりやすく伝える、などして消費者教育をさらに進めていくことが必要だと指摘されました。

続いて行われたパネル・ディスカッションでは、企業がサステナビリティ活動を始める際、社員や消費者からの理解を得ることが難しいため、社会の現状やそれを改善する必要性を教育プログラムとして実施することが欠かせないこと、インパクトを生むためにはできること全てを実施する必要があり、大企業・中小企業それぞれができることを展開していく必要があることが指摘されました。

日本社会ではSDGsが未だスローガンにすぎず目標になっていないため、まずは大企業がSDGsへの取り組みをはじめることによってフォロアーが増えていくのではないか、という見解も示されました。

またリサイクル原材料を用いた商品は価格が高くなりがちだが、大学生などの若い世代は環境問題について学びSDGsに対する関心も高いため、こうした商品のもつ付加価値に対価を払うことを歓迎する層が今後増えていくのではないかという見通しも示されました。