壊されるはずだった旧大宮図書館、再生の物語

【連載】オルタナティブな空間

この旧大宮図書館は解体されるはずだった。ところが、4年前に大宮駅東口まちづくり事務所の小林功さん(2018年当時の役職)が、公共R不動産のイベントにて、廃校などの公共施設を公民連携のリノベーションによって再生した事例をレクチャーで聞いてくれた。そして「もしかしたら、この考え方は壊されるはずの旧大宮図書館にも当てはめられるのでは? 解体後の敷地の利用計画もまだないし、そもそも解体するのはもったいないと思っていた。リノベーションという手もあるかもしれない」と、思ってくれたらしい。

旧さいたま市立大宮図書館(以降:旧大宮図書館)をリノベーションした複合施設「Bibli」

ある日、その小林さんから突然、連絡があった。

「旧大宮図書館をリノベーションしたら、どんな風景になると思いますか?妄想でいいので、パースをつくっていただけないでしょうか。がんばって予算を用意します」

その思いを粋に感じ、さっそく理想の風景を描いてみた。その1枚のパースを持って、小林さんのロビー活動が始まる。議会でも解体が承認された段階からの巻き返し。普通であれば考えられないし、ひっくり返すのは相当な労力や反対があることは容易に想像できる。

公共R不動産/OpenAによるパース

しかし、奇跡が起こった。地域の人々みんなにとって愛着も記憶もある図書館。解体して空き地が放置されているくらいなら、敷地の使い方が決まるまで暫定利用として活用してもいいのではないか。みんなが自然とそんな気持ちに変わっていったようだ。もちろん、小林さんの熱いプレゼンテーションがあったのだと思う。

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馬場 正尊(建築家)

建築家。1968年佐賀県生まれ。94 年早稲田大学大学院建築学科修了。博報堂、早稲田大学博士課程、雑誌『A』編集長を経て、02年Open Aを設立。東北芸術工科大学教授。

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