亀田製菓のインド出身新CEO「柿の種に依存しない」

亀田製菓 ジュネジャ・レカ・ラジュ会長CEOインタビュー

「亀田の柿の種」や「ハッピーターン」などのヒット商品で知られる亀田製菓が、ベジミート、アレルギー対応、防災備蓄など、社会課題に対応する食品企業への脱皮を目指している。指揮を執るのは2022年6月に会長CEOに就任したジュネジャ・レカ・ラジュ氏。インド出身で、国内外の多くの企業経営に携わってきた。(聞き手=オルタナ編集長・森 摂、副編集長・吉田 広子、撮影=川畑 嘉文)

ジュネジャ・レカ・ラジュ(亀田製菓代表取締役会長CEO)
1984年に大阪大学工学部に研究員としてインドから来日し、1989年に名古屋大学大学院生命農学研究科博士課程を修了、同年太陽化学に入社。2003年に代表取締役副社長に就任、その後、複数の海外グループ会社の最高責任者を兼任。2014年にロート製薬で取締役副社長兼チーフヘルスオフィサーに就任。2020年に亀田製菓代表取締役副社長に就任、2022年6月から現職。

亀田製菓のパーパス(存在意義)とは

――ジュネジャさんはロート製薬副社長から亀田製菓に転身されたのですね。

はい、2年前に亀田製菓に入りました。私は1984年に初来日し、大阪大学工学部の研究員から始まり、名古屋大学大学院生命農学研究科で博士課程を修了しました。バイオテクノロジーや発酵技術などを研究してきました。

特に微生物が専門で、いつも「世の中で何か新しいものを作っていきたい」と思っていました。今もそうです。

このまま世界の人口が増え続けると「プロテインクライシス」(たんぱく質危機)が訪れます。当社グループではプラントベース(植物由来)の代替肉を開発していますが、いずれ植物も不足するかもしれません。

それを解決するのが「微生物」です。藻類や海のプランクトンなど、微生物ならいくらでもたんぱく質が取れます。亀田製菓でも微生物にどう取り組めるかを考えています。

――これからの亀田製菓のパーパス(存在意義)も、その辺りにありそうですね。

常に意識しているのは、誰のため、何のために仕事をしているのか、です。亀田製菓は以前から「おいしさ」と「喜び」を提供することを使命としていますが、今は、これに「健康」と「環境」を加えて、「Better For You」(ベター・フォー・ユー) の食品業に進化することを目指しています。

当社は1946年に「亀田郷農民組合委託加工所」として創業しました。戦後、食糧難だった当時、男性はどぶろくで気晴らしできていましたが、女性や子どもには楽しみといえるものがありませんでした。そこで、「生活に喜びと潤いをお届けしたい」という思いで、創業者が水あめの製造を始めたのです。

1957年に株式会社化し、65年が経ちました。創業時の思いは今も引き継がれ、アレルギー持ちの方や、宗教上食べられない食材がある方など、すべての人がどんなときでも美味しいものを食べられる「食のバリアフリー化」に取り組んでいます。

グローバルで食品事業を強化しトップ狙う

――亀田製菓を生んだのはコメどころの新潟県です。亀田製菓の新CEOとしての戦略について教えてください。

亀田製菓は米菓のリーディングカンパニーとして、コメに付加価値を付けて、おいしく作って楽しく食べてもらうことがパーパスの一つでした。

当社は「亀田の柿の種」や「ハッピーターン」など米菓の会社として広く認知していただいていますが、人口減少に伴って国内の米菓市場は横ばいか減少傾向にあります。そのため、持続的に成長していくためには、これまで培った知見や技術を、海外事業に展開し、米菓以外の食品に応用していかなければなりません。

中期経営計画では、今後のビジネスを大きく3つのセグメントに分けています。「国内米菓事業」「海外事業」「食品事業」の3つです。いま国内米菓が約7割を占めていますが、2030年までに「国内米菓5割:海外3割:食品2割」の比率を目指します。

そのために食品事業を育成し、私たちは「グローバル・フード・カンパニー」になることを目指しています。国内米菓事業を軸に、私たちが今取り組んでいる植物性食品のビジネスを加え、世界のトップを狙います。

――これから伸ばしたい海外市場はどこですか。

いま最も大きな市場は北米です。2012年末にメアリーズゴーンクラッカー社(米カリフォルニア州)を買収しました。有機玄米粉を使ったグルテンフリーのクラッカーです。一般のクラッカーより割高ですが、27品目アレルゲンフリーで、付加価値は高いです。

米国だけでなく、今後は中国、ベトナム、インド、タイ、カンボジアなどの市場を育てたい。私は社内外で「将来のターゲットは(日本の)1億人ではなくて、(世界の)80億人です」とよく言っています。

たんぱく質不足、ベジミートで解消へ

亀田製菓のグループ企業は防災備蓄やベジミート、アレルギー対応など社会課題に対応した食品を販売している

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yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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