ロート製薬 山田邦雄・会長インタビュー

2016年に「薬に頼らない製薬会社へ」を掲げたロート製薬。同社は、農・食事業、微細藻類の培養など、課題解決型の事業を次々に手掛けている。一貫しているのは、「健康」へのこだわりだ。社内起業家を支援するプロジェクトも立ち上げ、新たな事業領域にチャレンジしている。その真意を山田邦雄会長に聞いた。(オルタナ副編集長=吉田 広子)

山田邦雄・ロート製薬会長(撮影・高橋慎一)
山田邦雄・ロート製薬会長(撮影・高橋慎一)

■山田邦雄(やまだ・くにお)ロート製薬会長。1979年3月東京大学理学部物理学科卒業、1990年慶應ビジネススクールMBA取得。1980年4月ロート製薬入社。営業職、マーケティングなどを経て、1992年代表取締役専務に就任。1999年代表取締役社長、2009年から現職。

■究極の目標は「ウェルビーイング」

――なぜ「薬に頼らない製薬会社へ」というメッセージを打ち出したのですか。

私たちは、日常に近い領域で市販薬や化粧品を製造・販売してきました。しかし、よく考えると、薬がない方がハッピーな状態なのです。当社は先端医療にも取り組んでいますし、実際に薬がなくなるわけではなりませんが、「ウェルビーイング」な生活を送ってもらうことが究極の目標だと考えました。

そこで、あえてどきっとするような「薬に頼らない」という言葉を使いました。ウェルビーイングは、この数年で急速に認知されるようになった概念ですが、当社はもともと、体だけでなく、精神的にも社会的にも健やかな状態を一人ひとりが実感できるような社会の実現に貢献したいと考えていたのです。

――「人と同じことをやるな」という精神が代々受け継がれているそうですね。

「人と同じではない、独自のことをやろう」というのは、企業文化としてあります。当社は小さい企業ともいえませんが、いわゆるグローバルな大企業とも違った提案をしてきた会社です。そういう意味でも、常に一歩先を模索してきたと思います。

――食事業をはじめ新たなビジネスを立ち上げていますが、その背景について教えてください。

これまでは、海外から安いものを自由に買える時代でした。しかし、環境問題や政治的な分断もあり、世界中でモノが動くということが、必ずしも人々の幸せや豊かさにつながらないことが分かってきました。

大量生産ベースで、コスト競争力で世界に勝つビジネスモデルは、成り立たなくなってきたのです。ですから「新しい経済の循環」をつくらなければなりません。

医薬の世界も海外製のものも多く、国民の健康さえ、海外にお金を払わないと守れない。そういった危機感があります。

一方で、今後、先進国も新興国も高齢化していくなか、日本発の「健康長寿」を実現する技術は、世界の役に立つでしょう。

世の中で「食」をやっている人はたくさんいますが、私たちは、「製薬」というバックグラウンドがあります。人間の健康にどうつながるのか、科学的に結び付けることができれば、ロートとしての役割を果たせるはずです。

沖縄で循環型農業や藻の培養手掛ける

――具体的な事業内容について教えていただけますか。

「やえやまファーム」では有機パインの搾りかすを豚や牛の飼料に活用
「やえやまファーム」では有機パインの搾りかすを豚や牛の飼料に活用

沖縄・石垣島では、子会社の「やえやまファーム」が運営し、循環型農業を実践しています。日本唯一の有機パイナップルを栽培し、加工時に出る搾りかすを豚や牛の飼料に活用しています。その家畜の糞尿をたい肥化して、野菜や果物を育てています。

台風が来て大変なこともありますが、パインを食べて育った肉牛の味も良くなってきました。地域の理解を得ながら、少しずつ定着してきています。

久米島では、現地のベンチャーと組み、海洋深層水を利用して藻類の培養をしています。機能性のある藻で、食品として健康に役立てたり、農業資材として環境に貢献したり、産業を興して地域を活性化したりすることを目指しています。

久米島の海洋深層水を使ったクラフトビール
久米島の海洋深層水を使ったクラフトビール

日本全体の健康リテラシーを上げたい

――人間だけではなく、自然環境や地域社会の「健康」を考えた事業を行っているのですね。

※この続きは有料記事です。どのように人や社会の「健康」づくりに取り組んでいるのか、社内起業家を育成するプロジェクトなどについて語って頂いています。