フィンエアー、「将来、飛行機も化石燃料を使わなくなる」

フィンエアー 永原範昭・日本支社長インタビュー

航空大手のフィンランド航空(フィンエアー)が、2045年までに「カーボンニュートラル」を表明した。燃料消費が少ない航空機エアバスA350を導入するほか、持続可能な燃料(SAF)への代替で実現を目指す。欧州では短距離便の廃止も進める。永原範昭・フィンエアー日本支社長に脱炭素戦略を聞いた。(聞き手・吉田 広子=オルタナ副編集長、撮影・川畑嘉文)※インタビュー内容は2月上旬取材当時のものです

永原範昭フィンエアー日本支社長2

永原範昭(ながはら・ひろあき) フィンエアー日本支社長。1985年からエアインディアで空港業務を担当。90年、ニュージーランド航空に移籍。新規路線の立ち上げなどに携わる。2009年、フィンランド航空日本支社営業本部長。2014年から現職。ヘルシンキ~成田・関空・名古屋路線の増便と、福岡・札幌の新規路線の就航を実現する。

目標は高い方が喜びは大きい

─2045年までにカーボンニュートラルを達成すると宣言されました。なぜフィンエアーはこうした野心的な長期目標を掲げることができたのでしょうか。

2020年5月に、2045年までにカーボンニュートラル、2035年までに50%削減(19年比)という新たな目標を発表しました。それまで掲げていた目標から5年前倒ししています。合わせて、機内の食品廃棄物を2022年までに30%削減、使い捨てプラを同50%削減という目標も前倒ししました。

欧州企業は「バックキャスティング」で高い目標を掲げ、そこにどう近づけていくのかを考えます。100%のターゲットを設定して、100%を超える企業はないでしょう。

120%の目標を立てて初めて100%を達成するのだと思います。ターゲットはチャレンジングである方が、やりがいも達成したときの喜びも大きいです。

日本企業には「石橋をたたいて渡る」慎重さがありますが、欧州ははじめから失敗することは考えず、失敗した時にどうしたら良いかを考える。そうした違いがあります。

フィンランド特有の文化もあると思います。ベストを尽くした結果に対しては、責められません。間違った決断をしたときも、ベストを尽くせば、終わったことに対して追求はしないのです。高い目標を掲げて達成できなかったとしても、その姿勢が評価されます。

世界中の企業が脱炭素に向けて、高い目標を設定していますが、フィンエアー本社がさらに野心的な目標を掲げたのは、喜ばしいことだと受け止めています。

CO2を可視化し、選ばれる路線へ

─永原支社長は日本とヘルシンキをつなぐ路線の拡大に尽力してきたそうですね。

コロナ前の2019年夏期スケジュールでは、成田・関西・名古屋・福岡の4空港から週34便、日本航空とのコードシェア便を含めると週41便で運航していました。ヨーロッパ系航空会社では最大規模です。

戦略の根幹にあったのは、欧州とアジアを結ぶ最善の選択肢に入ることでした。ヘルシンキは地理的優位性があります。欧州とアジアを直線で結んだときに、最短の線上にあります。

─「グーグルフライト」は、CO2排出量を「見える化」しました。環境負荷が、航空会社を選ぶ基準になるという実感はありますか。

グーグルフライで、東京とオランダ・アムステルダムのルートでCO2排出量を比較すると、フィンエアーの場合、平均値よりも30%少なく済みます。

ヘルシンキは、日本から約8000キロメートルで、飛行時間は9時間ほどです。距離が短いということは、最大の贅沢であり、環境にも貢献します。

環境に負担をかけない、飛行機の乗り方について伝えていくことが、私たちの使命です。CO2排出量を「見える化」して、判断基準の一つにしていきたい。

いまはまだ「時間がかかっても良いから安いものを」という選び方をする方が多いです。旅行業界とも協力して、航空会社を変えるだけで、CO2排出に削減することを伝え、カーボンニュートラルを目指す企業にも、出張手段として選んでもらえるようになりたいです。

─脱炭素のロードマップについて教えてください。

最新の航空機を導入することが、カーボンニュートラルの一番の近道です。2015年には、ヨーロッパで開発された燃費消費の少ないエアバス社最新鋭「A350」型機をすぐに導入しました。それまでの機種と比較して燃費効率が約25%向上しました。

できるだけ早いタイミングで、100%置き換えることを目指しています。

燃料の消費量をいかに抑えるかも重要です。機内食のロスを減らしたり、食器を軽量化したり、搭載するものの重さの軽減にも取り組んでいます。

使い捨てプラスチックの削減も進めています。旅客機を買い替えるときに、単に機体を売却するのではなく、使える部品を再利用しています。部品の9割以上がリサイクル可能です。退役した旅客機の自社解体にも取り組み始めました。最後まで責任をもって使い切るということです。

持続可能な航空燃料への移行には課題も

─持続可能な航空燃料(SAF)の導入についてはどのくらい進んでいますか。

ネステ社と連携しSAFの導入を進める©Finnair and Neste
ネステ社と連携しSAFの導入を進める©Finnair and Neste

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yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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キーワード: #脱炭素

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