ヤマト運輸「50年に脱炭素化、物流をグリーンに」

■ヤマトグループ/ヤマト運輸 秋山佳子・執行役員(サステナビリティ推進部長)インタビュー

運輸業界最大手のヤマトグループ/ヤマト運輸は「2050年までにCO2自社排出量実質ゼロ」を打ち出し、サステナブル経営を進めている。環境ビジョン「つなぐ、未来を届ける、グリーン物流」を掲げ、2030年までに電気自動車(EV)2万台を導入するほか、再生可能エネルギーの割合を7割に高める。(オルタナ副編集長=吉田広子)

同社のサステナブル経営を率いる秋山佳子執行役員(撮影・高橋慎一)

秋山佳子(あきやま・よしこ)
ヤマトグループ/ヤマト運輸執行役員(サステナビリティ推進部長)。1988年4月、ヤマト運輸入社。2010年CSR推進部環境推進室長、2014年関西支社副支社長、2018年執行役員中国支社長を経て、2020年常務執行役員営業・サービスを担当。2021年4月から現職。

■変化する社会課題に正面から向き合う

――ヤマトグループは、2020年1月に経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」、2021年1月に「サステナブル中期計画2023【環境・社会】」を策定し、サステナブル経営の強化に向けて取り組まれています。その背景と狙いについて教えてください。

ヤマトグループは1919年の創業以来、経営理念として「豊かな社会の実現に貢献する」ことを掲げてきました。

「YAMATO NEXT 100」策定の背景には、急激な社会環境の変化による顧客ニーズの多様化があります。産業のEC化や、人口減少、地域の過疎化が急速に進み、この先も宅配事業を含め顧客ニーズに十分に応えていく必要があると感じていました。

同時に、気候変動問題や人権問題といったサステナビリティ領域での課題もあり、それらが複雑に絡み合い、変化する社会課題に正面から向き合う必要がありました。社会課題の解決は、事業の成長にも欠かせません。

サステナブル経営を強化するために、2021年1月、各重要課題に対する目標や施策をまとめた「サステナブル中期計画2023(環境・社会)」を策定しました。

社長を委員長とする環境委員会、社会領域推進委員会を組織し、重要なマテリアリティには「部会」を設定しました。経営統合を進めるために、各マテリアリティと関係の深い執行役員や部長らを部会長とし、具体的な施策や計画を検討しています。

――これだけEC化が進むと予測していましたか。物流が増えるということは、環境負荷が高まるという側面もあります。

新型コロナウイルス感染拡大以前から、ECが普及している米国市場と比較すると、日本のEC普及率はまだまだ伸びしろのある市場だと予想していました。2010年ころからECの発展に伴い物流の需要が増し、物流業界では様々な課題が出ました。

コロナ禍でパラダイムシフトが早まり、あらゆる産業のEC化が加速し、今後もこの流れは続くと思います。今後もEC化が進むという前提のもと、いかに環境や働き方に配慮していくかが問われています。

EC化によって、特に地方などで利便性が高まっているという側面もありますし、社会課題を解決するようなイノベーションも必要だと考えています。

■ 30年までにEV2万台、太陽光発電設備を810拠点に導入

――スコープ1、2で「2050年までにCO2排出量実質ゼロ」を目指し、この5月に、2030年までにEVを2万台導入するという施策を発表されました。EVの積載量やインフラの整備など課題もありそうですが、どのように実現していきますか。

私たちはステークホルダーと連携しながら、「グリーン物流」をつくることを目指しています。現在のEVの割合は1割未満ですが、それを約4割まで引き上げます。これにより、2030年までにCO2排出量を48%削減(20年度比)します。

物流業界は中小事業者が数多く活躍している業界なので、業界全体で進めていくことが重要です。そのため、運送に適したEVの開発も含めて、時間は多少かかります。

しかし、気候変動がこれだけ顕著化しているなか、運輸業界全体で環境問題に取り組まなければなりません。当社は宅配便事業の業界最大手として、サステナビリティと事業の統合に取り組み、業界をリードして取り組んでいきます。

具体的な取り組みを実行する部署として2021年10月、「グリーンイノベーション開発部」を新設しました。その中に、「エネルギーマネジメント課」と「モビリティ課」があります。

同部が中心となり、自動車メーカー、電池・蓄電池関係、インフラ、エネルギー・電力関係など、さまざまなステークホルダーと一緒に「共創」する座組みを検討しています。日野自動車とは、ラストマイルの超低床・ウォークスルーの小型BEVトラック「日野デュトロZ EV」の実証実験を進めています。

超低床で積載しやすい「日野デュトロ Z EV」
超低床で積載しやすい「日野デュトロ Z EV」

当社の「スコープ1」(燃料の燃焼など直接排出)は、法人顧客の「スコープ3」(輸送など間接排出)に当たります。どんなに良いサービスを提供しても、環境に配慮せずCO2をたくさん排出していては社会の期待に応えられず、お客さまから選んでいただけないという危機感もあります。

――太陽光発電設備を810拠点に導入するという施策も発表されましたが、どこに設置するのですか。

※この続きは有料記事です。再生可能エネルギーへの転換やスコープ3の取り組み、物流業界の働き方などについて語っていただきました。

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yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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