難民認定受けたアフガン男性「日本に恩返ししたい」

「世界難民の日」(6月20日)に合わせ、日本で暮らす難民を支援する認定NPO法人難民支援協会(東京・千代田)はこのほど、オンライン配信イベント「難民に心を寄せて―Refugees and“We”Talk」を開いた。登壇したアフガニスタン出身の20代男性は日本で難民に認定され、現在日本語学習プログラムを受けている。「難民認定を受けて新しい人生が始まった。命を救ってくれた日本に感謝し、恩返ししたい」と語った。(オルタナ副編集長=吉田広子)

アフガニスタン・カブールの市で、破壊されたタンクに座る少年(2012年撮影)(画像はイメージ)
アフガニスタン・カブールの市で、破壊されたタンクに座る少年(2012年撮影)(画像はイメージ)

「アフガニスタンにはさまざまな人がいて、いろいろな生活文化があり、皆がタリバンではない。しかし、多くの人は非常に宗教観が強く、アフガニスタンでは教育を受けられない人も多い。タリバンが来てからの生活は苦しく、アフガニスタンは安全ではない」

イベントに登壇したアフガン出身の男性は、こう続ける。「タリバンの考えを受け入れず、仮に殺されたとしても、『神さまや宗教指導者に言われたから』で済んでしまう」。

この男性は、「アフガニスタンは安全ではない」ことと、「社会やほかの人と考えが違っていた」ことで、身の危険を感じ、10年以上前から国外に避難することを希望していた。

「子どものころから、アフガニスタンの人たちや社会のなかでやっていけないと思い、逃げる方法を毎日考えていた。タリバン以前から、アフガニスタンのパスポートは世界で最も弱いパスポートで、どこにも行けず、外国で助けを求めるのは難しかった。10年以上かかったが、不法入国ではなく、ビザを持って日本に入国した。

「日本は天国のようなところ」

男性は来日の感想として、「アフガニスタンで、日本について学んでいるとき、良い人が多いのだろうなと考えていた。実際に来てみると、想像以上で、天国が存在するなら日本は天国のようなところだ」と話す。

「難民申請をするのは、とても時間がかかり、険しい道のりだったが、多くの人が支えてくれた。日本では、難民の多くが、何を食べるか、どこで生活するか、難民申請の結果が出るまで、苦しい生活をしている。しかし、10年以上、日本に来ることを願い続けていたので、寝る場所も食べるものがなくても、そこまで苦痛ではなかった」と打ち明ける。

日本の難民認定率は、1%に満たず、多くの難民申請者は苦しい生活を強いられている。難民支援協会(JAR)支援事業部の新島彩子さんは、「難民申請中は、いつ母国に強制送還されるか分からないという恐怖のなかで暮らしている」と解説する。

オンライン配信イベント「難民に心を寄せて―Refugees and“We”Talk」で
オンライン配信イベント「難民に心を寄せて―Refugees and“We”Talk」で

「アニメを通じて難民のストーリー伝えたい」

難民認定を受けたとき、どう感じたか。

男性は「マンガで別世界に行く話がよくあるが、『目が覚めたら全く違う世界にいる』感覚だった。難民認定されたと聞いたときは、新しく生まれ変わり、新しい生活・機会が与えられた感覚だった。昔は毎日、毎秒生き延びることに必死だった。もう生き延びるために生きる人生ではなく、自分の人生を生きることができる。全く違う、新しい人生が始まった」と振り返る。

将来については、「JARのような支援者や、この長い旅のなかで出会った人々のことをアニメで伝えたい。アニメをみて、新しく想像することができるし、新しい人生を歩むこともできるし、もっと良い世界をつくることもできる。私の夢は、アニメを通じて、こういったストーリーを世界に発信していくこと。多くの資金や人の協力が必要で道のりは長いが、必ず実現させたい」と語った。

日本に対しては、「心の底から感謝している。とにかくありがとうと伝えたい。入管庁やJARなど多くの組織が難民を助けているが、それを支えているのは日本のみなさんだ。日本の一人ひとりのおかげで良い社会ができている。日本は多くの命を救っている。私はその一例に過ぎない。JARや政府を通じて、難民を支援していることは人の命を救っているということ。私の命を救ってくれたということ」と感謝する。

「私は日本に恩返しができるように精一杯頑張る。私が寝るとき、起きたときにいつも思うことは、『死ぬまでの間、日本のために何か良いことをしたい』。亡くなったとき、日本が救った一人が日本に良い影響を与えたと少しでも思ってもらえるようにしたい」

6月20日は国連が定めた「世界難民の日」(World Refugee Day)だ。難民の保護と支援に対する世界的な関心を高めるのが目的だ。

これまで日本での難民認定率は極端に低かった。2021年は、難民認定申請者数2413人に対して認定を受けたのが74人(0.7% ※)、2020年は難民申請者3936人に対して、認定されたのは47人(1.2%)、2019年は1万375人の難民申請に対して認定されたのは44人(0.4%)にとどまる。

一方で、日本出身で、海外で難民として保護を受けている人も一定数いる。多い年で、2007年に519人、2014年に257人、この5年ほどは毎年約50人が難民として海外で暮らしている(出典:UNHCR「Refugee Data Finder」)。

日本でも「難民」の保護の在り方に関して議論が進むことを期待したい。

※その年の認定数を、同年の認定数と不認定数の合計で割った百分率として算出

◆世界難民の日2022 「難民に心を寄せて―Refugees and “We”Talk」(YouTube配信)

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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キーワード: #ビジネスと人権

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