アメリカン・エキスプレスは性的マイノリティーであるLGBTQ+の従業員の心理的安全性を高める取り組みを行う。周囲の理解がなく、「働きづらさ」を感じているLGBTQ+当事者は多い。心理的安全性を担保するため、社員のセクシュアリティなどを把握しやすい仕組みにして、見えていなかった課題を可視化した。(オルタナS編集長=池田 真隆)
アメリカン・エキスプレスは6月にLGBTQ+に関する調査を実施した。主な結果はこうだ。
「LGBTQ+の職場でのカミングアウトは5人に1人」「就職活動時に結婚の予定など性的指向・性自認に関する質問を受けた割合は15%」「65.4%が職場でLGBTQ+に対応した具体的な施策が無いと回答」
「人的資本」経営の柱の一つは、働きやすい職場環境づくりだ。人への投資が加速する中でも、以前としてLGBTQ+の当事者は職場で、「働きづらさ」を感じていることが浮き彫りになった。
同社では、 LGBTQ+にとって心理的安全性の高い職場を実現するために、「PRIDE+ネットワーク」という取り組みを始めた。当事者の心理的安全性を担保するための社内コミュニティで、当事者やアライ(LGBTQ+フレンドリーな人を指す)が会員だ。
LGBTQ+に限らず、自身のマイノリティのアイデンティティを人事システムに登録できるようにした。同社では社員のアイデンティティを可視化し、配置を把握して、人事施策に活用する。
同社ではこの調査をもとに、6月24日にセミナーを開いた。登壇したアメリカン・エキスプレス加盟店事業部門マーケティング アジア太平洋地域の津釜宜祥・副社長は、「企業が社会的責任を果たし、 企業価値を高めていくうえでLGBTQ+を含む多様な人材が働きやすく、心理的安全性の高い職場環境を整えることが重要だ」と強調した。

上司やチームリーダーがカミングアウトしてロールモデルとなっている場合、 相談しやすい環境になることが調査で明らかになった。津釜副社長は、理想的なキャリアパスを描きやすくするために、身近な上司やチームリーダーなどのロールモデルの存在が重要だと話した。
■Z世代、「カミングアウトしなくても自分らしく生きること可能」
調査結果では、Z世代の約半数が、「職場でカミングアウトしていなくても自分らしく生きることは可能である」と回答した。
セミナーに登壇した、ジェンダー・スペシャリストで関西学院大学の大崎麻子客員教授はこの結果について、「若い世代ほど、プライベートと会社を切り分けている。仕事以上の関係性を同僚や上司に求めていない」と分析した。

ジェンダー平等など社会課題の解決に取り組むTIEWA(東京・港)の合田文代表は「Z世代はソーシャルでつながりやすい世代。職場をメインのコミュニティと捉えていない人が多いのかもしれない」とした。さらに、若年層世代の帰属意識の変化も背景にあると指摘した。

「身近な課題が、社会構造を変化することで『変わっていくこと』だと感じにくいという世代的特徴が表れた結果となっている」