記事のポイント
- 欧米の企業を中心にDEIにB(ビロンギング)を加える動きが広がる
- DEIBが広がったのは欧米企業が大量離職を経験したことが背景にある
- Bは一人ひとりの自尊心を育んで生まれる「帰属意識」だ
欧米の企業を中心に、DEIにBを加える動きが広がっている。Bは「ビロンギング」で、直訳すると「帰属意識」だ。欧米で広がったのは、新型コロナウイルス流行以後、仕事観や価値観が大きく変化したことが背景にある。帰属意識を育んで、企業への定着率を高めるのが狙いだ。「B」を意訳すれば、一人ひとりの自尊心を育むことで生まれる「帰属意識」のことだ。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)
■なぜ欧米ではDEIに「B」が加わったのか
「大量離職時代(The Great Resignation)」という言葉がある。
これは米国の心理学者、アンソニー・クロッツが作った用語だ。新型コロナウイルスが流行して、米国ではレイオフ(一時解雇)が行われた。レイオフは再雇用が前提となる。しかし、コロナ禍の米国ではレイオフされた人材がそのまま退職し、レイオフの対象とならなかった人材も退職するなどの例が多かった。
企業や経営者はこのような状況に直面し危機感を覚えた。そして、社員を定着させていくためには、DEIだけでは足りず「ビロンギング」が必要だという認識が広がっていった。
日本ではこういった「大量離職時代」のような現象は見られない。しかし、働くことに対する価値観の変化は見られ、職場への定着は大きな課題となる。
日本生産性本部が継続的に行う「働く人の意識に関する調査」では、勤め先への信頼度は約54%が「信頼している/まずまず信頼している」と答え、45%が「信頼していない/あまり信頼していない」と答えた。
希望する働き方について聞くと、「仕事内容や勤務条件を優先し、同じ勤め先にはこだわらない」という回答が66.9%となった。
■Bは「自身に誇りを持ち、自分らしさを発揮できる」ことだ
DEIBのBの定義は何だろうか。
コーチングの国際団体である、国際コーチング連盟(ICF)は昨年、プログラムを改定しコーチングにビロンギングとJ(ジャスティス)を加えたDEIBJが求められるとした。
ICFのビロンギングの定義はこうだ。
Belonging: A feeling of being valued,being oneself without judgment. The state of being one’s authentic self.
(帰属: 価値ある存在であることを感じ、批判されることなく自分らしくあること。本来の自分らしさを発揮できる状態)
※翻訳はICFジャパン
国際コーチング連盟からプロフェッショナル認定コーチを取得する、コーチ・アイエヌジー(奈良県奈良市)の生嶋幸子社長は、「自分自身であることを誇りを持ち、自分らしさを発揮できている」ことだと強調する。自尊心を持った帰属意識が「ビロンギング」なのだ。
ただビロンギングは単体では実現することはできない。DEIBについて企業にコンサルティングを行う、PwCコンサルティングの吉田亜希子シニアマネージャーはビロンギングが実現するには「DEIの下地が必要だ」と強調する。
■DEIの主語は企業、Bの主語は社員
■帰属意識はフラットな場から生まれる
■「日本版ビロンギングが必要だ」