国際会計基準(IFRS)を策定するIFSBの上位組織であるIFRS財団が、2020年9月、サステナビリティ報告基準の策定に動き出すためのコンサルテーション・ペーパーを発表しました。(中畑陽一)
そして2021年11月のCOP26の場で国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設立を正式に表明すると同時に、統合報告基準策定母体IIRCと業種別サステナビリティ基準策定機関であるSASBが統合し生まれたばかりのVRF、さらには気候変動標準推進組織であるCDSBを統合する事を発表し、世界を驚かせました。
同時に発表された開示プロトタイプは全般的要求事項と気候関連開示要求事項の2本立てで、それらの核にはTCFDの4本の柱(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)が据えられ、既存の開示基準や枠組みとの整合性を備えていました。
世界有数の会計基準策定組織がサステナビリティの報告基準を作るという事で、いよいよサステナビリティの財務報告への統合が本格的に動き出したことになります。
ISSBは今年3月にプロトタイプをベースとした公開草案「S1 サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」と「S2 気候関連開示」を発表し、7月29日までパブリックコンサルテーション期間となっています。
ISSBはこれをグローバル・ベースラインと位置づけ、各地域に適した開示基準に反映していくビルディングブロックアプロ―チとなっています。日本における開示基準については、財務会計基準機構〈FASF〉傘下にサステナビリティ基準委員会〈SSBJ〉が7月1日に発足、ISSBの基準との整合性を多分に考慮して、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報開示基準を組み立てていくものと思われます。
ISSBのスタンスはあくまで投資家などの主に「一般目的財務報告」を利用する人の意思決定に関連する重要なサステナビリティ関連情報に焦点を絞っており、企業価値に影響するかどうかが問われるシングルマテリアリティのスタンスです。
■TCFDと同じ主要項目での開示を要求