世界が注目する2つのサステナ開示基準案(3)まとめ

これらの動きを包摂的に考えると、サステナビリティの課題は、企業価値を高める事だけではなく、深刻化する社会・環境への影響を軽減する事がそもそもの背景にあるため、両者を含めて開示するダブルマテリアリティベースの経営観と報告が必要になるというのが、筆者の考えです。(中畑陽一)

■GRIとISSBは今年3月に相互連携を打ち出す

その意味では、CSRDやGRI(任意サステナビリティ報告の世界標準)の果たす役割は大きく、実際GRIとISSBは今年3月に相互連携を発表しており、ISSBとGRIの「2つの柱」でサステナビリティ報告基準を打ち立てていく事を表明しています。

ISSBの基準案とCSRDのスタンスの違いはあるにせよ、それらは共通の利益も多くあり、大きく相互依存する関係にあります。特に、情報開示でウォッシュを排除する点は大きな共通便益と言えるでしょう。また、バリューチェーンを対象範囲にしている点も見落としてはいけない点でしょう。(ISSBとESRSの比較表もESRSの補足5にまとめられており参考になります。)

CSRDはEU域内に展開していない企業は関係しないとはいえ、世界中で進むESG投資や開示の進展、GRI含めグローバルルールがより厳格化していく流れからは逃れられないと思われます。

■統合的な経営のかじ取りと報告が必要な時代に

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中畑 陽一(オルタナ総研フェロー)

静岡県立大学国際関係学部在学時、イギリス留学で地域性・日常性の重要性に気づき、卒業後地元の飛騨高山でタウン誌編集や地域活性化活動等に従事。その後、デジタルハリウッド大学院に通う傍らNPO法人BeGood Cafeやgreenz.jpなどの活動に関わり、資本主義経済の課題を認識。上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR及びCSRディレクターを務め関東・東海地方中心に約70の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部にてサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。

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