スコープ3の衝撃(3)

■記事のポイント
①環境省が、温室効果ガス算出で一次データの使用を推奨することが明らかに
②これにより、これまで曖昧だった「スコープ3」領域で客観性や根拠が必要に
③形だけTCFDに賛同していてスコープ3を算出しない企業には厳しい視線も


環境省は2024年3月をめどに、企業の温室効果ガス(GHG)の排出量のうちスコープ3(間接排出)について「一次データ(実測値)」を用いた算定方法を推奨する。企業には、これまでの「推計値」から「実測値」での算定が求められるが、専門家は「正確にできているのはプライム市場に上場しているうちの1割以下」と話す。(オルタナS編集長=池田 真隆)

プライム市場の上場企業には気候変動リスクの開示が義務化された

GHGの排出量を自動で算出するクラウドサービスを提供するブーストテクノロジーズ(東京・千代田)の青井宏憲社長は、「リアルタイムデータでスコープ3まで算出できているのはプライム市場に上場している企業のうちまだ1割以下に過ぎない」と言い切る。

同社は2015年に創業したクライメートテックだ。シリーズAで12億円の資金調達済みで、イオンやZホールディングスなどの大手企業と取引を行う。

イオンとは5月末に契約を結び、イオングループ全拠点のGHG算出を自動化し、施設の耐水リスクや地震対策などの管理を効率化した。

排出量の増加で気候変動が悪化すると経済リスクに直結する。豪雨などの水没で不動産価値が下落したり、食料品に被害が出たりする。脱炭素を国際課題とし、各国が取り組みを進める。

プライム上場企業に気候変動リスクの開示を義務化

日本では2022年4月に東証が市場を再編して、プライム市場をつくった。東証は上場企業のコーポレートガバナンスの原則を「コーポレートガバナンス・コード」で定めたが、プライム市場の1839社に対しては同コードで気候変動リスクの開示を義務付けた。

同コードでは、国際イニシアティブTCFDもしくはそれに相当する水準での開示を求めた。TCFDが求める開示項目には「ガバナンス」や「戦略」「指標と目標」などがある。

各項目について気候変動リスクを踏まえた上での説明を求めるが、「指標と目標」では「スコープ1,2及び該当するスコープ3のGHGを開示する」としている。

スコープ1は自社の活動に伴う 「直接排出」だ。スコープ2は、「エネルギー起源の間接排出」。自社が購入した電気・熱の使用に伴う排出量だ。スコープ3は、「その他の間接排出量」と定義した。

スコープ3に関しては、これまで国内では売上高や取引高と業種平均(産業連関表ベース)の排出係数や参考文献、業界団体が定めた数値など「二次データ」といわれる数値を用いて算定していた。

二次データはあくまで平均なので「推計値」だった。これを環境省では2024年3月に実測値である「一次データ」に切り替えることを推奨していく。算定方針についてもガイドラインで示す。

だが、一次データで算定するためには、全サプライヤーからデータを取ることが必要で膨大な工数とコストが掛かる。従来は調達先にエクセルデータを送り、調達した製品について排出量を入力してもらっていた。

リアルタイム測定は「数パーセント以下」

ブーストテクノロジーズの青井社長は排出量の管理は4段階に分けられると話す。