GX会議:「原子力は解決策にならない」と専門家

記事のポイント
①岸田首相はGX実行会議を軸に原発の再稼働や新増設を見込む
②GX化の最低条件として今冬までに最大9基の原発の再稼働を狙う
③専門家は「需給ひっ迫の解決には原発より再エネの利用拡大」を訴え

岸田文雄首相はGX実行会議を軸に「原発の最大活用」を狙う。「エネルギー危機の克服なくしてGXはあり得ない」と強調し、再稼働だけでなく新増設も見込む。専門家は、「原発の再稼働は解決策にならず、電力の需給ひっ迫は複数の手段で対応することが重要だ」と訴えた。(吉田 広子、池田 真隆、長濱 慎)

岸田首相は今冬までに最大9基の原発の再稼働を目指す

政府は7月27日、脱炭素による経済成長を目指す「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」の初会合を開いた。

6月7日に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画・骨太方針2022」で、GXを新しい資本主義の柱として打ち出した。政府はGX実現へのロードマップを描くことを目的に、同会議を総理官邸に設置した。

初会合には議長として岸田首相、GX担当相の萩生田光一経産相、山口壮環境相らが出席した。有識者として十倉雅和・経団連会長、伊藤元重・東京大学名誉教授、杉森務・ENEOSホールディングス会長らが出席した。

同会議のアジェンダは主に二つある。一つは、「エネルギーの安定供給の再構築」。もう一つは、脱炭素に産業構造を変革するための今後10年間の「ロードマップ」を策定することだ。

直近の課題はエネルギー危機からの克服

電力の需給ひっ迫で、1973年の石油危機以来のエネルギー危機が危惧される。同会議の直近の課題は、足元の問題であるエネルギー危機からの克服だ。

2022年夏季の電力需要に対する予備率は、老朽火力の最大活用などによって7月は東北から九州エリアで3.7%、8月は5.7%を確保した。しかし、冬季については、2023年1月、2月に東京から九州の7エリアで安定供給に必要な予備率3%を下回ることを見込んでいる。

岸田首相「原発再稼働と『その先の展開策』」求める

同会議を終えた岸田首相は「エネルギー危機からの克服なくしてGXはあり得ない」と強調した。8月に開く次回会議までに、「原発再稼働とその先の展開策など政治判断を求める項目を明確に示してほしい」と話した。

岸田首相の狙いは、参院選公約で掲げた「原子力の最大活用」だ。GX実行会議を軸に「脱原発」から「原発再稼働」の機運を高めていく。まず狙うのは、今冬までに最大9基の原発の再稼働だ。原子力規制委員会の審査を通過した9基である。

だが、狙いはそれだけではない。「その先の展開策」と表現したが、将来的には新増設も見込んでいることが濃厚だ。

GX担当相を兼務する萩生田経産相も、2日の大臣会見で、「明日停電するかもしれないなかで、グリーントランスフォーメーションは実現できない。まずは安定したエネルギー供給を急ぐ必要がある」との考えを示した。

産業界からも、原発推進を期待する声が上がる。経団連は原子力を3E(エネルギー安全保障・安定供給、経済効率性、環境適合性の3条件)を満たしている「脱炭素電源」と位置付ける。

経団連はオルタナ編集部の取材に対して「引き続きこの方針に沿って原発をゼロエミッション電源に位置付け、技術開発や情報発信に努める」(環境エネルギー本部)とコメントした。

「原子力は解決策にならない」

一方で、自然エネルギー財団の石田雅也シニアマネージャーは、「原子力発電は解決策にならない」と言い切る。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #自然エネルギー

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