核融合発電は本当に「無尽蔵でクリーンで安全」か

記事のポイント
①脱炭素を実現する次世代のシステムとして「核融合発電」が期待を集める
②海水から燃料を取り出せて、原発のような危険性がないとされる
③しかし放射性物質の発生など、実用化にはクリアすべき課題が多い

脱炭素社会に向けて注目を集める発電方法に、核融合がある。国もGX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた施策のひとつに位置づける。核融合発電は海水から燃料を作ることができ、クリーンで安全で実用化も近いとされている。しかし、一つひとつ検証していくと問題が山積みだ。(オルタナ客員論説委員・財部明郎)

■核融合発電が期待される4つの理由

最初に、原子力発電との違いを説明しよう。原発は「核分裂」という現象を利用して発電する。ウランやプルトニウムのような重い原子の原子核に中性子をぶつけて分裂させ、そこで発生する熱エネルギーで蒸気を沸かし、タービンを回して発電する。

これに対し、水素のような軽い原子が融合してヘリウムのような少し重い原子になる反応が「核融合」だ。核融合発電はこのときに発生する熱エネルギーを利用して発電する。太陽の内部でも同じ現象が起きていることから、「地上の太陽」とも呼ばれる。核融合発電が期待を集める理由は、大きく4つある。

1)無尽蔵の資源から莫大なエネルギーを得られる
2)放射性廃棄物やGHG(温室効果ガス)が発生しない
3)原子力発電所と異なり、暴走の危険がなく安全である
4) 研究が進んでおり、実用化も近い

核融合発電の燃料には、海水などに含まれる水素を使うとされている。これが「無尽蔵の資源」と言われる理由だ。核融合で発生するのは放射線を持たないヘリウムで、GHGも出さないから「クリーン」と評価される。

核融合を起こすには高温と高密度な空間が必要だが、万が一事故になればこの空間が壊れるため、核融合は自然に止まる。原発のように暴走して、手が付けられなくなる危険性もないという。

実用化については、日本を含む各国が資金を出しあってITER(イーター)という実験炉をフランスに建設中で、2035年12月の運転開始を目指している。

■海水だけでなく放射線を出すトリチウムも使う

有料会員限定コンテンツ

こちらのコンテンツをご覧いただくには

有料会員登録が必要です。

takarabeakira

財部 明郎(オルタナ客員論説委員/技術士)

オルタナ客員論説委員。ブロガー(「世界は化学であふれている」公開中)。1953年福岡県生れ。78年九州大学大学院工学研究科応用化学専攻修了。同年三菱石油(現ENEOS)入社。以降、本社、製油所、研究所、グループ内技術調査会社等を経て2019年退職。技術士(化学部門)、中小企業診断士。ブログでは、エネルギー、自動車、プラスチック、食品などを対象に、化学や技術の目から見たコラムを執筆中、石油産業誌に『明日のエコより今日のエコ』連載中

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..