■人と魚の明日のために(42)
記事のポイント
- 水産物の量はこの10年以上、9000万トン前後で頭打ちだ
- 増加する世界の需要に応えるために、養殖業に期待がかかる
- しかし、養殖の拡大で餌となる小型の魚の乱獲が進むなどの懸念もある
世界中の海や内水面で漁獲される水産物の量はこの10年以上、9000万トン前後で頭打ちになっている。一方で世界人口は増加し、一人当たりの水産物の消費量も増加した。この需要に応えたのが養殖業だ。1990年には200万トンに満たなかった養殖生産量は2020年には8750万トンに増え、天然漁獲量とほぼ同レベルになった。前年比でも230万トンの増加だ。
過去5年間で養殖生産業、海面漁業ともに減少した日本とは大きな違いがある。今後も天然漁獲量を増やせる見込みはなく、増加する世界の需要に応えるには、養殖業の拡大が重要だとされている。
国連食糧農業機関(FAO)は、世界の養殖業の生産量は2030年には1億100万トンに拡大、予想される水産物需要約1億7300万トンの半分以上を養殖業でまかなうことになる、と予測する。
一方で、海面漁業の生産は現在よりかなり減少せざるを得ないとの予測だ。だが「養殖業が世界の食を支えるとの考え方は楽観的過ぎる」との研究成果を著名な漁業資源学者ダニエル・ポーリー博士らカナダ・ブリティッシュコロンビア大学の研究グループが発表した。
■養殖生産量の増加率は減少傾向に