生物多様性の新戦略案公表、サプライチェーン対応などを促す

記事のポイント


  1. 環境省が次期生物多様性国家戦略案を公表した
  2. 2030年のネイチャーポジティブ実現へ目標や今後の取り組みを整理した
  3. サプライチェーン対応など国内企業の取り組み推進も盛り込む

環境省は30日、「次期生物多様性国家戦略(案)」を公表した。昨年12月のCOP15で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」に沿って、2030年までのミッションとして「ネイチャーポジティブ(自然再興)」の実現を掲げた。5つの基本戦略を掲げ、各基本戦略ごとに15の「あるべき姿(状態目標)」、25の「なすべき行動(行動目標)」などを示した。企業にはサプライチェーン対応などの取り組み推進も促す。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

環境省は2030年ネイチャーポジティブに向けて新しい戦略案を公表した

2030年ネイチャーポジティブに向けた5つの基本戦略として、「生態系の健全性の回復」、「自然を活用した社会課題の解決(NbS)」、「ネイチャーポジティブ経済の実現」、「生活・消費活動における生物多様性の価値の認識と行動」、「生物多様性に係る取組を支える基盤整備と国際連携の推進」を挙げる。

各基本戦略で2030年に実現すべき状態目標と、そのために取り組むべき行動目標を示した。さらにその行動目標を達成していくための具体的施策を設けた。

環境省は今回の新戦略案を「2012‐2020生物多様性国家戦略」の改訂ではなく「昆明・モントリオール条約で示された2030年ターゲットを盛り込むなど、いちから作成した」と強調する。

新戦略案のポイントのひとつは「ネイチャーポジティブ経済」だ。環境省はこの言葉を「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させることに資する経済」と定義する。

環境省が22年3月に設置したネイチャーポジティブ経済研究会がネイチャーポジティブ経済実現に向けた「ネイチャーポジティブ経済移行戦略(仮称)」を23年度内に策定する予定だ。

企業の取り組みも推進する。戦略案のなかでは「TNFD等の国際的な枠組に対応できるよう、生物多様性に係る評価や情報開示に係る仕組みの整備、サプライチェーンに係るデータ連携、ノウハウや情報共有のためのプラットフォーム構築等を進める」と明記した。

経団連自然保護協議会の「生物多様性に関するアンケート<2019年度調査結果>」によれば、サプライチェーンにおける生物多様性への影響の把握・分析・評価を行っている会員企業は24%にとどまる。一層の取り組みが欠かせない。

企業に取り組みを促すことで、サプライチェーン対応、指標・見える化、データ整備を実施している企業の数を増やしていきたい考えだ。このような取り組みを推進するための投融資基盤の整備も進めていく。

環境省では新戦略案へのパブリックコメントを2月28日まで募集する。また、各地で説明会を開催する。

萩原哲郎

萩原 哲郎(オルタナ編集部)

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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キーワード: #生物多様性

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