記事のポイント
- 大手電力6社が新電力の顧客情報を不正閲覧し、「取り戻し営業」が明らかに
- 一方で、新電力会社の6社に1社が事業から撤退するに至った
- そもそも送配電・小売りが同一企業傘下なのは、真の「電力自由化」とは言えない
大手電力会社が競合関係にある新電力会社の顧客情報を不正閲覧した不祥事は、関西電力を端緒に、東北電力や九州電力など6社に拡大した。この問題は、そもそも発電会社・送配電会社・小売り会社が地域ごとに同じホールディング企業の傘下にあるところに真の原因がある。(オルタナS編集長=池田 真隆)
大手電力から新電力に切り替えたユーザーに対して、大手電力がより安い電気料金を提示する「取り戻し営業」を巡る不正は昨年12月、1人の関西電力社員の内部告発によって明らかになった。
ところが、この不正は以前から、新電力業界では有名な話だった。複数の新電力会社幹部によると「3年ほど前から、経産省の電力・ガス取引監視等委員会(電取委)に、再三、調査するよう申し入れいた」という。
新電力に切り替えたユーザーの顧客リストは、地域の送配電会社にも共有される。その送配電会社と同じ資本傘下にある電力小売り会社にとって、リストさえあれば、そこに集中して「取り戻し営業」の攻勢を掛けられる。新電力会社にとってたまったものではない。
そもそも2016年4月に始まった電力の小売り自由化の当初から、「取り戻し営業」は問題視されていた。電取委は2018年に「電力の小売り営業に関する指針」を公表し、取り戻し営業が「法令違反」であることを明確に文書で示した。
しかし、事態は一向に改善されなかった。ある新電力会社幹部は「2020年ごろから取り戻し営業が露骨に増えていったので、電取委に調査の申し入れをした」と証言する。だが、当時の電取委は「証拠がない」ことを理由に、動こうとしなかったという。
■「不正閲覧をした電力会社はまだ増える可能性も」