EUでグリーンクレーム指令、環境アピールに根拠義務付け

記事のポイント


  1. 「グリーンウォッシュ」への規制が強まっている
  2. 欧州委員会は3月22日、「グリーンクレーム(環境主張)指令」を発表
  3. 企業が環境主張を行う場合、科学的根拠に基づいて立証することを提案した

環境に配慮したように見せかける「グリーンウォッシュ」への規制が強まっている。欧州委員会は3月22日、「グリーンクレーム(環境主張)指令」を発表し、企業が環境主張を行う場合、科学的根拠に基づいて立証することを提案した。欧州委員会の調査(2020年)によると、環境配慮をうたう製品やサービス、広告などの40%には「根拠がない」という。(オルタナ副編集長=吉田広子)

EU(欧州連合)は2019年に成長戦略「欧州グリーン・ディール」を発表し、2050年までに温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロを目指している。

この欧州グリーン・ディールの下、欧州委員会は、気候変動対策やサーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行を推進する政策を提案してきた。グリーンウォッシュを排除する「グリーンクレーム指令」も、その一環だ。

グリーンウォッシュとは、実態が伴わないのに、環境に配慮したように見せかけることだ。英語の「ホワイトウォッシュ(ごまかす)」から来た表現だ。

欧州委員会が2020年に行った調査によると、環境主張の53%は「あいまい/誤解を招く/根拠がない」で、40%は「裏付ける根拠がない」という。

EU には 230 のサステナビリティ(持続可能性)に関するラベルがあるが、透明性のレベルは大きく異なり、50%は「検証が不十分または存在しない」とした。

欧州委員会は、「環境主張のなかには信頼できないものもあり、それらに対する消費者の信頼は極めて低い」とし、消費者と環境を保護するために、「グリーンクレーム指令」を提案したとしている。

■カーボンオフセットにも注意促す

欧州委員会の発表によると、同指令の対象は、EUの消費者に向けて環境主張を行う企業だ。EU 域外に拠点があっても、対象になる。消費者団体などは、この指令に基づき、法的措置を講じることができるようになるという。

「グリーンクレーム指令」では、企業が次のような環境主張を行う場合、それを立証する責任があるとしている。

「再生プラスチックを30%使用したパッケージ」
「海に優しい日焼け止め」
「2015 年以降、環境フットプリントは 20%削減された」
「ミツバチに優しいジュース」
「この製品に関連するCO2排出量は、2020年と比較して半減した」

特に、カーボンオフセットやカーボンクレジットに基づくGHGの削減は、不明確であいまいになりやすい、と注意喚起している。

ほかの製品や組織と比較する場合も、比較可能で、同等のデータに基づいていなければならないとしている。

一方、EU エコラベルやオーガニックのラベルなどは、既存の EU 規則の対象になっているため、除外される。このような信頼性が保証された認証制度の活用も、グリーンウォッシュの予防に役立つ。

最近では、英広告基準機構(ASA)が、ルフトハンザドイツ航空が展開するキャンペーン広告の調査に乗り出したことが話題になった。「世界をつなぎ、その未来を守る」というキャッチコピーが、航空機の環境インパクトが少ないという誤解を招く懸念があるとした。

日本でも、消費者庁が2022年12月、「生分解性」をうたっていたカトラリー類やレジ袋などの表示が「優良誤認」にあたるとして、10社に対し行政処分を行った。

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yoshida

吉田 広子(オルタナ輪番編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。2025年4月から現職。執筆記事一覧

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キーワード: #脱炭素

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