――今までのODAなどとは全く違う印象だが

その通りで、従来のように海外へ技術を移転したり、インフラを整備したりすれば何とかなるという話ではない。なぜなら地球環境リスクをもたらす災害や感染症などの様々な問題は未だ解決の途上にあり、途上国、あるいは日本が独力で対処できるものではないからだ。

岡谷氏とSATREPSスタッフのみなさん

SATREPSではこれらの課題の解決のために、研究の段階からパートナーシップを組むところに最大の特徴がある。そのメリットは途上国の研究ポテンシャルが上がる、すなわち持続的に課題研究に取り組めるということと、もうひとつ、日本が持っている技術をアップグレードできる、ということだ。研究テーマによっては国内の環境難民リスクに還元できるものもあるかも知れない。

SATREPSの取り組みは世界的に見ても先進的だ。例えば米国はUSAID(国際開発庁)とNSF(米国立科学財団)が協力してやろうとしているし、欧州でも同様だが、日本はこれらに先んじており、取り組みの規模も最大だ。われわれはこれを「科学技術外交」とも呼んでいる。

――日本が先んじた理由は

途上国は「自分の資源が勝手に使われるのは嫌だ」と言う意識が根強い。例えば2000年代初頭に鳥インフルエンザが世界的に流行した際、インドネシアではワクチンの開発に必要なウイルスなどの「生物資源」が先進国に根こそぎ持ち去られて、同国に何の利益ももたらさなかったために政府が憤慨し、以後先進国への協力に非常に否定的になった、という問題があった。

これは先進国のニーズの途上国への押し付けがもはや成り立たない、ということの端的な例といえる。互いにメリットをもたらすには、相手国と組まないといけないし、そもそもそうしないと問題が解決しない。一緒にリソース(資源)を開発し、問題解決に当たることで、グローバルなイノベーションも期待できる。

例えば中国はアフリカで嫌われている、と言われるが、これは中国が現地で資源だけでなく雇用なども根こそぎ自国に囲い込む姿勢が指摘されている。こうした「帝国主義」的な手法は行き詰まっており、これからはパートナーシップで問題に対処していこうという考えが世界的な認識になりつつあると言える。

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