再エネの有効活用に必須なLDES、コストが最大の課題に

記事のポイント


  1. 再エネを有効活用するための技術としてLDESが注目される
  2. LDESのポイントは10時間以上供給できる電気を貯蔵できることだ
  3. 40年までに世界の消費電力の1割相当の貯蔵量になると予想も、課題はコスト

太陽光発電などの再生可能エネルギー電源を有効活用していくために、LDES(長期エネルギー貯蔵技術)が必須技術として注目を集め、世界で研究開発が進む。LDESの定義は定まっていないが、10時間以上供給し続けられる電気を貯蔵できることがポイントだ。40年までに世界の消費電力の1割に相当する貯蔵量に達すると見込まれるが、一方でコストが最大の課題となっている。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

再エネ電源の有効活用へLDESが不可欠となっている

LDESは長時間放電することができる蓄電技術を指す。蓄電技術は蓄電池などが主流だが、様々な技術の開発が進んでいる。米・国立再生可能エネルギー研究所は、LDESについての単一の定義はないとしつつも、10時間以上電気を供給し続けられる量を貯蔵できることがポイントになるとしている。

LDESを巡っては、2021年に国際組織「LDES協議会」が立ち上がった。LDESを普及させ2040年までの電力系統部門におけるネットゼロ実現を目指す。協議会のなかには、グーグルやマイクロソフト、シェルなどが名を連ねる。

民間での研究開発も進む。YSエネルギー・リサーチの山藤泰代表はたとえば「重りを充電するときに引っ張り上げ、放電が必要な時にはゆっくり落下させて、その際に発電機を駆動する方式がある」と紹介する。スイスの新興企業が開発した技術で、設置事例もあるという。

また水素にも注目する。「再エネが余剰になった際、水の電気分解を利用して水素を作って保存すれば蓄電となる。必要な時に、その水素を燃料電池などで発電することができる」(山藤氏)。

一方で課題もある。国立環境研究所の担当者は「最大の課題はコスト」だと指摘する。電力貯蔵技術は開発中のものも含めて複数ある。しかし、それぞれの技術の高いコストが「電力貯蔵技術の展開を妨げている」という。コストを下げていけるかが今後の焦点になりそうだ。

マッキンゼー&カンパニーは21年11月に出したレポート「Net-zero power: Long-duration energy storage for a renewable grid」で、LDESの貯蔵容量は2040年までに世界の消費電力の1割にあたる85~140テラワットに達するとした。

萩原哲郎

萩原 哲郎(オルタナ編集部)

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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