記事のポイント
- SDGs(持続可能な開発目標)がブームになりつつある
- 一方、SDGsに貢献しているように見せかける「SDGsウォッシュ」も指摘されている
- SDGsウォッシュの最大リスクは、社員のエンゲージメントの低下だという
※本記事は、オルタナ72号(2023年3月30日発売)の第一特集「ウォッシュ監視――国連も行政も」から転載しています。ますます厳しくなる国内外のグリーンウォッシュへの規制について、事例を交えながら、最新動向を紹介しています。お求めはこちら(BASE)から
「『SDGsウォッシュ』がもたらす最も深刻なダメージは、社員のエンゲージメントの低下だ」。こう主張するのは、ソニーブラジル社長、WWF(世界自然保護基金)ジャパン事務局長を経て、現在は中堅・中小企業のSDGs経営を支援する筒井隆司・日本ノハム協会専務理事だ。同氏がSDGsウォッシュのリスクを解説する。

英語には単語の意味からはちょっと推測しがたい、慣用的な用い方が多い。
ウォッシュ(wash・洗う)という言葉も「グリーンウォッシュ」や「SDGsウォッシュ」などと使われる場合には本来の意味を離れて、「実際よりも誇張する」、「実態と異なる訴求や、表面だけを飾る行為」など、好ましくない意味に使われる。
企業が自らの行為を伝える際に、少しでも消費者や株主を欺く意図があったり、事実を歪曲して伝える悪意があったりすれば、当然それは問題だ。それが露呈すれば、ブランドを傷つけ、社会的信用を大きく失うことになる。
■SNSの発達でリスクが高まる
これほどSNSが普及し、利用者すべてがアクティブな情報発信者となった社会では、ウォッシュが露呈するリスクは飛躍的に高まっており、企業は常に世間の厳しい目に晒されていると思った方が良い。
しかし、SDGsウォッシュがもたらす企業にとって最も深刻なダメージは、社員たちが経営者や会社自体に失望したり、疑念や反感を抱き始め、エンゲージメント(業務に対する真剣さやエネルギー)が下がってしまったりすることではないだろうか。