「名古屋電力みたいなものを1個作って、発送電分離も含めて、独占せんようにせないかんわ」――河村たかし名古屋市長インタビュー

脱原発論者を自認する名古屋の河村たかし市長

東京電力が求める電気料金値上げに対し、東京都の猪瀬直樹副知事が猛反発している。

大阪では橋下徹大阪市長が府知事時代から脱原発を唱え、関西電力と激しく対立している。

さて、橋下市長と双璧をなす人気首長といえば、名古屋の河村たかし市長だ。河村市長は原発についてどう考えているのか。

名古屋市に電力を供給しているのは中部電力だが、その中部電力には、昨年5月に菅直人首相(当時)が直々に原子炉停止を要請した浜岡原発がある。

このとき河村市長も「中部電力のお得意さんは経済産業省ではなく市民だ。これだけ不安があることなので、いったん止めるのが当たり前だ」と政府の判断を支持した。

浜岡原発は地震の多い東海地方にとって今後も頭の痛い問題だが、実は中部電力の原発は浜岡だけで、福島第一事故前の原発依存度も日本の電力会社のなかで12%程度と、もっとも低かった(沖縄電力を除く)。

その河村市長が危惧しているのは、実は浜岡よりも福井の原発だ。

「中部電力は原発なしでも十分やっていけるはず。だから、止めや言うとるん。実は名古屋市にとって福井にある関電の原発の方が怖いんですわ。あそこが事故を起こすと西風で名古屋の水源(木曽川上流)が放射性物質でやられますから。名古屋には誰も住めんようになるぞとワーワー言うてますわ」

河村市長は昨年8月11日に高速増殖炉「もんじゅ」(敦賀市)や美浜原発(美浜町)を視察。関電から、施設の扉の防水加工を強化するなど津波対策を充実させたと説明を受けたが、視察後「市民感覚からすれば、本当に安全かどうか疑問だ」と話している。

■独占だったら、まだ役所の方がマシ

「大阪市も東京都も大株主だからいいけど、名古屋は中部電力の株主じゃないからね…。とはいえ、名古屋市も脱原発に挑戦していかなくてはと思っている。ワシは国会議員のときから脱原発と言っとるけど、マスコミも付いてきてくれないもんだで」

電力会社の株主になっていないことを残念そうに話す河村市長だが、国会議員時代のエピソードを話してくれた。

「10年くらい前だったか、民主党の議員7~8人と東電の柏崎刈羽発電所へ視察に行ったことがあって、視察後の大接待がすごかった。その話は当時、雑誌にも話したけど、確か副社長だったか何だか経営者まで来ていて、そりゃあ、もう大変なもんでしたわ」

「そんときワシは民主党の国会Gメンをやってましたんで、『ちょっと帰らしてもらう』と言ったんですが、あんまり引き止めるんで、すぐに帰ったら感じ悪いかなと思ってメシだけ食ってきた。えらい美味かったけど(笑)」

河村市長は昨年12月に出版した『復興増税の罠』(小学館新書)の中で、電力会社が地域独占を続けたら事故はまた起きると書いている。

「1社独占だとね、結局は何ともならへん。発送電分離も含めて、名古屋電力みたいなものを1個作って、セカンドオピニオンがあるようにせないかんわ。独占だったら、まだ役所の方がマシだわ。いろいろ問題があるけど、市長も議員も選挙で選ばれとるしね」

なお、自然エネルギーに関して著書の中で、「セントレア(中部国際空港)の近くには強い風が吹くから、風力発電の導入を考えてもいい」と、行政として最大限の協力を惜しまない姿勢を明らかにしている。(横山渉)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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