米国でも価格高騰の「銅」ケーブルの盗難相次ぐ

記事のポイント


  1. 米国のEV充電施設などで、充電ケーブルの盗難が急増している
  2. 被害の多くは、価格が高騰している「銅線」を狙ったものだ
  3. EVチャージャーの運営各社は、盗難防止対策への投資を進める

米国の公共EV充電施設などで、充電ケーブルの盗難や破壊行為が急増している。被害の多くは、ケーブル内の銅線を狙ったものだ。銅の国際価格はここ2年で2倍に高騰した。EVチャージャーの運営各社は、盗難・破壊防止対策への投資を進める。(オルタナ副編集長=北村佳代子)

米国では公共EV充電施設で「銅」を狙った盗難・破壊行為が増えている

米調査会社JDパワー社は2024年8月、「米国電気自動車エクスペリエンス(EVX)公共充電調査」を発表した。それによると、米EV所有者の公共充電インフラに対する総合満足度は向上したが、公共充電の抱える2つの課題が浮き彫りとなった。

一つは、EV所有者の好む、直流充電(DC)での急速充電器がEVの普及台数に追いついていないことだ。そしてもう一つは、充電ステーションを訪れたが充電を断念したEVドライバーが全体の19%と、前年に引き続き高い水準にとどまったことだ。

■公共充電を断念した最大の理由は「設備の不具合」

充電断念の最大の理由は「充電設備が故障中」または「不具合があった」で、全体の61%を占める。断念した人の10人に1人は、「ケーブルやコネクターの損傷」を理由に挙げた。

「一部の充電施設では、充電ケーブルの破壊や盗難が多発している。特に、山間部では、盗難・破壊行為が充電障害の14%を占めた」と、JDパワーのEVプラクティス・エグゼクティブ・ディレクターのブレント・グルーバー氏はコメントした。

■EV充電ケーブルの破壊行為が広がる

EV充電網への信頼性が損なわれると、EVドライバーの航続距離に対する不安は増すばかりだ。

北米で約1000カ所のEV充電ステーションを運営するエレクトリファイ・アメリカ社では、2024年に入ってから、これまでに215本のEV充電ケーブルが切断の被害に遭った。その数は、前年の同時期に比べ1.5倍超だ。

北米で約3700カ所のEV充電ステーションを運営するFLO社も、2024年に入ってから、ケーブルの破壊行為が増加していると言う。

カリフォルニア州に本社を置く米チャージポイント・ホールディングス社のEV充電網でも、破壊行為の約8割が、ケーブルの切断によるものだった。

■ケーブル内の「銅」が狙われている

狙われているのはケーブル内の「銅」だ。

銅の国際価格は2024年5月に2年ぶりに最高値を更新した。国際指標となるロンドン金属取引所(LME)3カ月先物は、今年5月20日(日本時間)に一時、1トン1万1100ドル前後をつけた。2020年初頭の1トン5000ドルから約2倍の価格だ。

銅は電気を通しやすい。そのため、脱炭素化の潮流の中で、EVの心臓部から太陽光・風力発電の送電ケーブルまで、需要が拡大している。生成AIの普及を背景に、今後増えるデータセンターの送電ケーブルにも必要な素材だ。

コロナ禍が収束し、各種の建設事業が再開したことも、電線やケーブル需要を高め、銅の価格を釣り上げている。

ブルームバーグによると、「レベル2充電器」と呼ばれる低速充電ケーブル1本には、約2.3キロの銅が含まれている。現状、約21ドル(約3000円)相当だ。

■盗難・破壊防止対策の投資はかさむ
■監視システム以外にも様々なソリューションが
■欧州でも同様の被害が

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北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

オルタナ副編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部。

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キーワード: #EV

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