冷凍空調機器が使えなくなることも、冷媒の回収・再生訴え

記事のポイント


  1. 冷凍空調産業に関わる5団体が冷媒の回収・再生を企業に訴えた
  2. フロン類の回収が進まないと、エアコンや冷蔵庫などが使えなくなることも
  3. 代替フロンの希少性を認識してほしいと共同要望書を公表した

冷凍空調産業に関わる5団体は6月30日、冷媒の回収と再生を訴える共同要望書を公表した。地球温暖化対策計画ではフロン類の回収率目標を2030年に70%としているが、直近は約40%で、その向上が課題だ。フロン類の回収が進まないと、将来、エアコンや冷蔵庫などが使えなくなる可能性もある。(オルタナS編集長=池田 真隆)

代替フロンの不足によって、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで冷蔵・冷凍庫が使えなくなる可能性も

共同要望書をまとめたのは、冷凍空調産業に関わる(一財)日本冷媒・環境保全機構、(公社)日本冷凍空調学会、(一社)日本冷凍空調工業会、(一社)日本冷凍空調設備工業連合会、日本フルオロカーボン協会の5団体。

要望書では、代替フロン(HFC)不足で起きる社会的な混乱を避けるため、企業にフロン類の回収と再生を訴えた。HFCは主に冷凍空調機器の冷媒として使われている。

特定フロンと違い、オゾン層を破壊しないのが特徴だが、地球温暖化係数はCO2の100 倍から1万倍と大きな温室効果を持つ。

環境に深刻な影響を及ぼすHFCに、国際社会は規制を強化する。それが、2016年10 月にルワンダの首都キガリで採択した「キガリ改正」だ。

特定フロン(CFC、HCFC)の製造を規制していたモントリオール議定書を改正し、製造規制対象にHFCも入れた。

代替フロンの「2024年問題」、製造量を40%削減へ

キガリ改正は2019年1月1日に発効した。先進国は2024年に大きな節目を迎える。2024年に、HFC製造量は2011~2013年比で40%削減を義務化する。2036年には85%削減(同基準年)を義務化するので、HFCはほぼ生産できなくなる。

HFCを使う新製品に関しては、フロン排出抑制法の指定製品化によって、徐々に温室効果の低い冷媒に置き換わりつつあり、対策が進む。

一方、課題は機器の修理補充用にHFCを使う場合だ。修理補充用に関しては、リサイクル冷媒の利用が推奨されているが、回収率は伸びない。地球温暖化対策計画ではフロン類の回収率目標を2030年に70%としているが、直近は約40%代を推移する。回収されてもその多くが破壊されているのが実情だ。

このまま対策が進まないと修理補充用の代替フロンが不足し、冷凍や空調の使用に支障が出る可能性もある。

「このままでは市場混乱が起こる可能性も」

2019年の代替フロンの温暖化影響は実績で4,754万CO2換算トン/年だった。政府の削減見通しは2025年に2,840万CO2換算トン/年、2030年に1,450万CO2換算トン/年だ。

要望書を公表した5団体は、「代替フロン機が増える2025-2030年には修理補充用の代替フロンだけで約1,000万CO2換算トン/年を超えると推定され、これを削減しないと生産・消費枠の多くの部分を占めることとなり、このままでは、新製品用と修理補充用の両者に需給ギャップが起こり、市場混乱が起こる可能性があります。今後、世界的な冷凍空調市場の拡大や経済安全保障による代替フロンの資源確保競争も懸念されます」と指摘する。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #脱炭素

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