ジェンダーも競争力も、日本が後退する共通の理由

記事のポイント


  1. 最新の「ジェンダーギャップ指数」で日本は過去最低の世界125位だった
  2. 「世界競争力ランキング」でも、日本は過去最低の35位だった
  3. これらのランキングで後退する理由には、日本が抱える共通の課題がある

6月に発表された「ジェンダーギャップ指数」で日本は過去最低の世界125位となり、失望とともに大きな話題となった。しかし日本は他のさまざまなランキングでも順位は低い。SDGsの認知度は年々高まっており、多くの人が知るところとなったが、具体的な成果に結びついていないのが現状だ。後退する理由には日本が抱える共通の課題があった。(伊藤 恵・サステナビリティ・プランナー)

日本はジェンダー対応が遅々として進まない

国別の「競争力」も過去最低に

先述した「ジェンダーギャップ指数」は、146カ国中125位で、前年から9ランクもダウンした。以前から指摘されている政治・経済での格差が埋まらず、他国が格差解消を進めるなかで置き去りにされている状態だ。

このランキングでは、当選者の女性の割合が過去最高の28%となった2022年7月の参院選は反映されていない。参院選や地方選挙で見られている動きが今後もさらに広まっていくことが期待される。

3月に発表された、国際金融都市の競争力の指標である「グローバル金融センターインデックス(GFCI)」でも、東京は3年前の3位から順位を大きく落とし21位となった。

世界130の金融都市を対象に、「ビジネス環境」「金融人材」「インフラ」などの項目でスコアを算出しているが、高度金融人材の不足が以前から指摘されていた。なぜ日本には優秀な人材が来てくれないのか。根本の原因から改善していく必要があるだろう。

世界の主要約60カ国を対象にした「世界競争力ランキング」でも、日本は過去最低の35位。研究開発分野の競争力は世界的にも高く評価され、特許出願件数は世界で1位。研究開発力からイノベーションを起こすポテンシャルは充分あるように思える。

しかし、企業の閉鎖性から市場変化への対応が遅れ人材育成もすすまないなど、高い技術力を活かしきれていないことが指摘されている。

多様性の欠如がもたらす負の連鎖

このようにさまざまなランキングから浮かび上がっている共通の課題は、「多様性の欠如」だ。

いまだに取締役や決裁者は男性ばかりの「ボーイズクラブ」から抜け出せない政界や企業。 LGBTQに対する差別禁止や同性婚を法的に認めていないのが、G7諸国の中で日本だけだということもG7広島サミットで話題になった。

ここでランキングが上がった「幸福度ランキング」にも目を向けてみよう。日本は昨年の54位から47位と順位をあげた。しかし中身を見ると「社会的自由」と、「寛容さ(他者への寛大さ)」が低評価で「人生評価/主観満足度」も非常に低い評価になっている。

時代とともに世界は変化しているのに、いまだに変化しきれずに不自由な社会。日本で暮らすことへの満足度は下がり、優秀な人材も流出。国や企業の競争力は低下していくという負の連鎖が浮かび上がってくる。

近年のランキング下降の一因として、他国、特に同じアジア諸国の躍進から相対的に順位が下がっているという点も挙げられる。

かつてアジア経済を牽引してきた日本だが、今度は歴史や文化的背景も近いアジア諸国から学ぶべきタイミングが来ているのかもしれない。

itomegumi

伊藤 恵(サステナビリティ・プランナー)

東急エージェンシー SDGsプランニング・ユニットPOZI サステナビリティ・プランナー/コピーライター 広告会社で企業のブランディングや広告制作に携わるとともに、サステナビリティ・プランナーとしてSDGsのソリューションを企業に提案。TCC新人賞、ACC賞、日経SDGsアイデアコンペティション supported by Cannes Lionsブロンズ受賞。執筆記事一覧

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キーワード: #ジェンダー/DE&I

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