
ドキュメンタリー映画「核の傷」は、軍医として被爆治療にあたった肥田舜太郎医師が内部被爆の実態を訴える姿を追った作品だ。
本作は、存命の被爆者が治療をうける様子や、『低レベル放射能』の著者であるスターングラス博士が低線量被爆について語る姿などを映し出す。
人体へ影響を及ぼす放射線量の基準は、アメリカのABCC(原爆障がい調査委員会)が広島と長崎で実施した調査を元に決定した。しかし、そこには為政者の思惑が働いており、肥田医師は「科学者を名乗った最も権威のある集団が嘘をついている」と糾弾する。
国連の発表では、1945年以降に原爆被爆の影響による癌で死亡した人数は110万人だが、ヨーロッパの研究員の再調査では、6100万人に達するという。
95歳となった今も被爆者の治療を続け、自身も被爆している肥田医師は「核兵器反対を訴える私たちは時代遅れになるかもしれない。それでも地道な活動を続けていく」と決意を語る。
福島同様、広島と長崎も風化させてはいけないと再確認できる一作だ。(オルタナ編集部=赤坂祥彦)