海洋汚染に地球温暖化、世界のサンゴ礁の75%に存続の危機

記事のポイント


  1. 重要な海の貴重な生態系の一つ、サンゴ礁に危機が迫っている
  2. 海洋汚染に加え、地球温暖化の影響が顕在化しつつあるからだ
  3. 2030年には世界の90%が存続の危機に陥ると予想される

サンゴ礁は生物多様性にとって重要な役割を果たす
サンゴ礁は生物多様性にとって重要な役割を果たす

重要な海の貴重な生態系の一つ、サンゴ礁に危機が迫っている。海洋汚染に加え、地球温暖化の影響が顕在化しつつあるからだ。2023年は世界各地で海水温が高くなるエルニーニョ現象が発生、サンゴへの影響がさらに拡大すると懸念されている。

「世界中のサンゴ礁の75%が存続を脅かされており、これは2030年には90%に増えると予想される。サンゴ礁が失われることによる漁業や観光業などの価値は年間1兆ドル近くに上る」

この4月、サンゴの研究者らでつくる米国の民間組織、サンゴ礁アライアンスのヘザー・スターク代表はオンラインで開いた会合でこう指摘した。

サンゴ礁は漁業資源の涵養に重要だが、乱獲や破壊的な漁業など漁業活動や開発の影響を受ける。近年、最も大きな影響を与えているものが気候変動による海水温度の上昇だ。水温上昇はサンゴに共生しているプランクトンが抜け出してしまう白化を招き、長引くとサンゴが死滅する。

23年は南米ペルー沖の海域などを中心に海水温が高くなるエルニーニョ現象が発生しているため、さらに懸念が高まっている。米海洋大気局(NOAA)によると、23年に入って米フロリダ州周辺の海域では過去に例がない高水温が長期間続く「海洋熱波」が発生。既にサンゴの白化が観察されている。また、この周辺の海域やカリブ海を中心に14年以降、イシサンゴ組織喪失病(SCTLD)という新しいサンゴの病気が拡大傾向にあることも不安材料だ。

■ 沖縄の「石西礁湖」の衰退著しく

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井田 徹治(共同通信社編集委員兼論説委員/オルタナ論説委員)

記者(共同通信社)。1959年、東京生まれ。東京 大学文学部卒。現在、共同通信社編集委員兼論説委員。環境と開発、エネルギーな どの問題を長く取材。著書に『ウナギ 地球 環境を語る魚』(岩波新書)など。2020年8月からオルタナ論説委員。

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