政府は2030年に向けた日本のエネルギー政策について、原発依存度をそれぞれ0%、15%、20~25%とする3つのシナリオを設け、「国民的議論」を進める。ところが意見聴取会では電力会社の社員が原発維持の意思表明を行い、公平性が疑われる結果に。そして8月12日締め切りの国民からの意見募集(パブリックコメント)に対しても「難し過ぎる」「国民に対する周知が足りない」などと問題点が指摘されている。
■国家戦略室「専門家が1年かけ議論」
「選択肢そのものに問題がある。短期間では答えるのが難しい」「重大な問題なのに、8月末までに国が結論を出さなければいけない理由は」。23日夜に都内で行われた政府担当者との意見交換会で、市民から政府が進める「国民的議論」への不満が噴出した。
同意見交換会は「原発ゼロ・パブコメの会」とeシフトが19日に続いて都内で開催。政府から国家戦略室の担当官2名が出席した。
加藤聖・参事官補佐はこれらの不満に対して「3シナリオは専門家が1年かけて議論したもの。国民的議論の期間延長の要望があることは国家戦略室で共有している」と回答したが、市民からは「専門家の議論をどうやって市民に伝えたのか。インターネットに触れない人にとっては知ることさえ困難」などと再び反発の声が上がった。
■パブコメ広告、明言避ける
エネルギー政策は社会の根幹にかかわるテーマだが、政府は「国民的議論」の周知に消極的だ。そのことは、東日本大震災にともなうがれきの広域処理で政府が新聞広告などを通じて大々的にキャンペーンを展開したことと比較すれば明らかだ。加藤参事官補佐は広告実施について「努力は続けたい」とのみ語り、明言を避けた。
政府が示すエネルギーの将来像自体も問題だ。原発維持にともなうリスクや費用負担、東電原発事故の収束に関する記述は皆無に等しく、一方で原発ゼロシナリオでは「経済的負担が重くなっても(自然エネルギーの)導入を促進」などと記述し、将来に向けた投資であることには触れず負担面をことさらに誇張する表現がみられる。
これで公平な議論ができるのか。このままでは「国民的議論」は政府のアリバイ作りで終わりそうな気配だ。(オルタナ編集委員=斉藤円華)2012年7月25日