当事者視点でのバリアフリーのコンサルティング、ユニバーサルな接客技術の研修などを行う会社が大阪にある。自身も車いすに乗る社長が描くバリアフリーな未来とは。(聞き手:今一生)=文中敬称略
垣内俊哉(23歳) 株式会社ミライロ代表取締役社長。生まれつき骨形成不全症を患う。立命館大学入学後、障がいのある自身の視点を強みにした事業アイデアで、13のプランコンテストに入賞。2010年6月に同社設立。
(本誌からの続き)
――ミライロは大学を顧客にユニバールデザインを進めていますね

垣内 はい。実は大学在籍者の内、障がい者の割合は0.3%にすぎません。大学のバリアフリーが整っていないこと、バリアフリーが整っていてもその情報を発信できていないこと、支援体制が整っていないことなど、数多くの原因が挙げられます。
大学で、様々な角度からバリアフリー・ユニバーサルデザインを進めることにより、障がいのある学生たちが、「学びたい場所で学べる社会」を作りたいと思っています。
具体的な取り組みの事例をお話すると、大阪大学様には、全3キャンパス内にある100ヶ所以上のサインの移設・張り替えのコンサルティングを行い、実際に車椅子でキャンパス内を調査し、視認性・可読性・判読性の高いデザイン及び移設位置の適切化を指示しました。

また、龍谷大学様では、全キャンパスのバリアフリー情報を記載したバリフリーマップを制作し、車いすで移動できる経路を一目で把握できるようにしました。施設調査には学生さんにご参加頂き、大学内部から「バリアフリーを浸透させる」風土作りを目指しました。
これらのマップはパンフレットとして印刷され、障がいのある学生はもちろんですが、大学に初めて来られる地域の方々の日常生活にも役立っています。また、公式ホームページにも掲載されているため、誰もが簡単に龍谷大学様のバリアフリー状況を確認できます。
――今ではホテルでも、50室以上あればバリアフリー・ルームを1室設ける必要があります
垣内 そうですね。おっしゃる通り、最近ではホテルでもバリアフリー・ルームが増えています。でも、ステンレスの冷たい手すりだったり、ここまでするのかというぐらいにコテコテのデザインだったりで、まるで病室のようなバリアフリー・ルームも多いです。
私は人生の5分の1が入院生活だったので、病院に戻された感覚になってしまい、嫌なので、バリアフリー・ルームはほとんど利用しません。ですので、ミライロでは必要最低限の設備で、内装は他の部屋と極力変わらないバリアフリー・ルームを推奨しています。