オルタナ総研統合報告書レビュー(25): 大日本印刷

記事のポイント


  1. DNPは2月、PBR1.0倍超の実現を目指す経営方針公表
  2. 統合報告書では、「事業戦略」「財務戦略」「非財務戦略」を示す
  3. 注力事業領域の開示拡充を通じ、PBR1.0倍超の早期実現達成を強調

大日本印刷は今年2月9日、「DNPグループの経営の基本方針」として「持続的な事業価値・株主価値の創出を行い、ROE10%を目標に掲げ、PBR1.0倍超の早期実現を目指す」と公表しました。8月に発行された「DNPグループ統合報告書2023」では、「注力事業領域について開示を拡充し、PBR1.0倍超の早期実現を達成する」と強調されています。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

DNPグループ統合報告書

同社は現在、「DNPグループの経営の基本方針」に基づき「2023-2025年度新中期計画」を実践しています。

8月に発行された「DNPグループ統合報告書2023」では、トップメッセージとして北島義斉社長が、新中期経営計画における施策の骨子を次の様に述べています。

1.「事業戦略」は、「注力事業領域」(デジタルインターフェース、半導体、モビリティ・産業用高機能材、コンテンツ・XRコミュニケーション、メディカル・ヘルスケア)に2027年度までの5年間で2600億円以上を集中的に投資する。また事業ポートフォリオの改革を引き続き実行する。

2.「財務戦略」は、今後5年間で政策保有株式を純資産の10%未満に縮減し、資本効率の向上をめざし、総額で3000億円となる自己株式取得を計画する。

3.「非財務戦略」は、「人的資本ポリシー」に基づく「人への投資」の拡大、DNP独自の強みと外部連携を活かした「知的資本の強化」、脱炭素社会・循環型社会・自然共生社会の実現に向けた「環境への取り組み」を中心に推進する。

4.DNPグループのめざす収益・資本構造を「営業利益1300億円以上」「自己資本1兆円」「ROE10%」とする。

5.注力事業領域について開示を拡充し、「PBR1.0倍超の早期実現を達成」する。

同社の新中期経営計画施策策定の背景には、PBR1倍割れの企業に「改善計画」の開示を強く求める東京証券取引所の方針があると思われます。

IR・広報本部、総務部、法務部、監査室担当の橋本博文常務取締役は、「多様な「対話」の機会を創出し、適時・適正な説明責任を果たして、ステークホルダーの皆様とともに 「より良い未来」をつくり出す」と述べています。

今年3月9日に開催された新中期経営計画説明会では北島社長が初めて登壇されました。市場との対話路線に転換し、成長戦略への理解を求める姿勢が感じられます。

同社の対話の機会は、その他にも「決算説明会」や「サステナビリティ説明会」等があり、ステークホルダーの意見は、「DNP自身が「より良い未来」をつくっていくための大きな財産となる」と強調しています。

ステークホルダーの意見がどの様に、DNPのより良い未来に繋がったかを次回の統合報告書で開示されたらいかがでしょうか。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #サステナビリティ

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