記事のポイント
- AIなど最新技術の発展で、データセンターのデータ処理量が急激に増えてきた
- 世界全体のデータセンターのエネルギー消費量は、航空業界と同等だ
- データセンターの持続可能性を、世界最大手のサステナ責任者が語った
AIなど最新技術の発展によって、データセンターのデータ処理量が急激に増えてきた。データセンターのエネルギー消費量は世界のエネルギー消費量全体の2%以上を占め、航空業界と同等だ。データセンターの世界最大手米エクイニクス社のサステナビリティ責任者が、データセンターの持続可能性を語った。(オルタナ副編集長=池田 真隆)
国際エネルギー機関(IEA)が公表した「Electricity 2024」では、世界全体のデータセンターのエネルギー消費量は2026年には2022年の2倍以上に増えると予測した。この消費量は日本全体の消費量に相当する。
ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルによるガザ地区への攻撃など地政学的リスクが高まる中、エネルギーの安定的な調達がデータセンターの持続可能性には欠かせない。
米国カリフォルニア州に本社を構えるデータセンター保守サービス世界最大手のエクイニクスのクリストファー・ウェライズ・サステナビリティ担当バイスプレジデントは、「事業のあらゆる側面を持続可能性というレンズを通して捉えている」と話す。

「デジタル世界の進歩は、それを支えるために必要な世界の既存の電力網を急速に追い越した。 持続可能性の目標を損なうことなく、社会の需要に応えるデジタルインフラストラクチャを提供することに集中する必要がある」

同社が注力するのは、再生可能エネルギーの推進とエネルギー効率の改善だ。2030年までに再エネ100%利用を目標に掲げた。 「エクイニクスのポートフォリオ全体で96%の再エネ利用率を維持し、6年連続で再エネ利用率が90%を超えた」(ウェライズ氏)。
データセンターののエネルギー効率の改善にも取り組み、前年比で8%以上改善したという。
「気候変動」や「森林」「水」などの分野で企業を格付けする国際NGO CDPから、一定の評価を得た。CDPが、企業の気候変動に対する透明性と実績を評価した「Climate Change A List」に入り、最高ランクを2年連続で獲得した。 2023年にCDPに環境データを開示した2万3千社以上の企業のうち、最高得点を獲得したのは2%未満だった。
■データセンターでトマト栽培、地域住民に配る
同社はデータセンターの余熱を地域に提供する「Heat Export プログラム」を推進する。近隣の建物やプールにカーボンフリーなエネルギーを供給する。フランス、フィンランド、ドイツ、アイルランド、スイス、カナダなどで実施中だ。
ウェライズ氏は、「持続可能なエネルギー利用を促進し、環境負荷を軽減する。地域経済の活性化にも貢献する取り組みだ」と話した。
パリ五輪の会場の一つである競泳センターにも、パリに設置したデータセンターの余熱を供給する予定だ。

2023年にパリに建設した最新のデータセンター「PA10」の余熱は15年間無償で、パリ五輪で使うプールや地元企業や家庭に供給する。PA10の屋上ではトマトなど農産物を栽培しており、食糧難に苦しむ地域住民に寄付している。